エリック・カール作・絵『ぼくのねこみなかった?』(原題 Have You Seen My Cat?、1973年 アメリカ初版、1991年 偕成社 日本語版、おおつきみずえ訳)は、ねこを探す少年の旅を描いた絵本です。少年が出会うのは、ライオンやトラ、チーターなど世界中の「ねこ科」の動物たち。ですが、どれも探している飼いねこではありません。色鮮やかなコラージュとシンプルな繰り返しが印象的で、幼児でもストーリーを追いやすい構成になっています。最後に本物のねこが見つかる結末は、安心感と達成感を与えてくれる一冊です。
略歴
エリック・カール
エリック・カール(Eric Carle、1929 – 2021年)は、アメリカを代表する絵本作家・イラストレーターです。彼はドイツで育ち、14歳の時にアメリカから家族とともに移住しました。戦時下の厳しい生活の中、彼の芸術の才能は養われ、デザインやアートへの興味が深まっていきました。その後、アメリカへ戻り、ニューヨークで学び、卒業後は広告業界でグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしました。そんな中、彼のイラストを見たビル・マーチンの依頼で『くまさんくまさんなにみてるの?』の挿絵を手がけたことがきっかけで、絵本作家としての道が開けます。1969年には、代表作となる『はらぺこあおむし』を出版。この作品は世界中で翻訳され、子どもたちに親しまれる名作となりました。カラフルでコラージュ技法を用いた独特な作風が特徴で、作品には自然や成長をテーマにしたものが多く、子どもたちの好奇心や想像力を刺激するものが多いです。
その後も多くの絵本を手がけ、教育的で遊び心のある作品を発表し続けました。彼の作品は、視覚的な美しさだけでなく、インタラクティブな要素を取り入れ、子どもたちが実際に体験しながら学べる構成が多いことでも知られています。
おおつき みずえ(訳)
おおつきみずえ(大槻美津江)さんは、英米児童文学や絵本の翻訳者として活躍されています。『ぼくのねこみなかった?』をはじめ、『パンダくんパンダくん なにみているの?』『しろくまくんなにがきこえる?』なども翻訳を担当しました。彼女の翻訳は、シンプルでリズム感があり、子どもが声に出して楽しめる工夫がされています。また、原文の持つユーモアやリズムを日本語に自然に置き換えることに定評があり、多くの親子に親しまれています。幅広い作品を手がけ、海外絵本の魅力を日本に伝える役割を担ってきた存在です。
おすすめ対象年齢
『ぼくのねこみなかった?』は、3歳ごろから楽しめる絵本です。繰り返しの展開で先を予想しやすく、幼児でも安心して楽しめます。また、動物が大好きな子には、ライオンやトラといった「大きなねこ」との出会いが新鮮に映るはずです。字数が少なく展開が明快なので、読み聞かせの入門にもぴったり。小さな子どもから小学校低学年まで幅広く楽しめる絵本です。
レビュー
この絵本を読んでまず感じたのは、「繰り返しの楽しさ」と「意外性のある出会い」です。子どもと一緒に「これはぼくのねこかな?」と考えながら読み進めると、次に出てくる動物を予想してワクワクできます。ページをめくるたびに現れる大きなねこ科の動物たちは迫力満点で、エリック・カールの鮮やかなコラージュが生き生きと表現しています。シンプルな文章なのに、旅をしているようなスケール感があって大人も楽しめます。最後に小さな飼いねこが登場する場面は、ほっと安心できる締めくくり。親子で何度でも繰り返し楽しみたくなる絵本です。


