岩崎ちひろ作の絵本『あめのひのおるすばん』は、1968年に発行されました。この絵本は、雨の日にお留守番をしている女の子が主役です。窓の外で降る雨の音や部屋の中の静かな空気感が、岩崎ちひろ独特の柔らかな水彩画で表現されています。女の子が一人で過ごす中での少しの寂しさや、おかあさんを待つ様子が、読む人の心に温かさを与えます。文章は短く、絵の力で物語が進むため、子どもも大人も心地よく楽しむことができます。岩崎ちひろが描く子どもの無邪気さや繊細な感情が、雨の日の静かな時間とともに美しく描かれた一冊です。
いわさきちひろの略歴
岩崎ちひろさん(1924年 – 1974年)は、日本の絵本作家・画家で、主に水彩画による繊細で優美な作品で知られています。福井県で生まれ育ち、幼少期から絵に親しむ中で小学校の学芸会ではたびたび舞台上で即興で絵を描くほど才能豊かでした。戦後、復興期を迎えながら、画家としての道を模索していました。1950年代頃までは油彩画も多く手がけていましたが、1963年以降はもっぱら水彩画に専念することになりました。
その後、子どもたちの幸せと平和ために「こども」を描くことに情熱を注ぎ、『あめのひのおるすばん』(1968年)や『ゆきのひのたんじょうび』(1973年)をはじめ、多くの名作を生み出しました。彼女の作品は、自然の美しさや子どもの心を見事に描き出しており、世代を超えて愛されています。生涯を通じて約9,000点の作品を制作し、その絵画は国内外で高い評価を受けています。岩崎ちひろは日本の絵本文化を発展させた第一人者として、現在も多くの人々に影響を与え続けています。
ちひろさんは1974年にがんのため亡くなりました。 没後、彼女の作品は多くの人々に愛され続け、1977年には自宅跡地にちひろ美術館・東京が開館しました。
おすすめ対象年齢
対象年齢は、主に幼児から小学校低学年(3歳~7歳頃)が推奨されています。短い文章と柔らかな水彩画が特徴で、幼児でも内容を理解しやすい構成になっています。また、雨の日に感じる静かな時間や子どもの想像力がテーマであり、少し年齢の高い子どもにも深い共感を与える内容です。保護者が読み聞かせるだけでなく、自分で絵をじっくり楽しむ時間にも最適な一冊です。
レビュー
『あめのひのおるすばん』は、雨の日の静けさや穏やかな時間が心に染み入る絵本でした。絵本全体を包む岩崎ちひろ独特の柔らかな水彩画は、雨音や窓辺の雰囲気を見事に表現していて、ページをめくるたびに自分もその空間にいるような感覚を覚えます。女の子が一人で過ごす時間は、少しの寂しさとともに温かさが感じられ、おかあさんを待つ姿は子どもらしい無邪気さを思い出させてくれました。この絵本は、大人が読むとノスタルジックな気持ちに、子どもが読むと安心感を抱ける、まさに年齢を問わず心に響く作品です。雨の日が少し特別に感じられるようになる、優しさに満ちた一冊だと思います。