くるまはいくつ?/渡辺 茂男

『くるまはいくつ?』は、作:渡辺茂男、絵:堀内誠一、発行は1967年、福音館書店から出版された絵本です。内容は、車輪の数に注目しながら「車」が何台あるかを数えていくというもの。たとえば、「車がひとつあるものなんだ?」「1りんしゃ。それじゃ2つのものは?」というように、1,2,3…と車の数がふえていき、それに応じていろいろな乗り物が次々と登場します。観察の目を育てたり、数えることへの興味を喚起する、新しい試みの乗り物絵本です。出版社の紹介文にも「車輪がひとつのものなんだ? 1りんしゃ。それじゃ、2つのものは? 1、2、3……と車の数がふえていく乗物絵本。今までになかった新しい試みです。」とあり、単なる数絵本を超えて、形や乗り物の種類の発見が楽しめる構成になっています。

略歴

わたなべしげお

渡辺茂男(わたなべしげお,1928年 – 2006年)さんは、日本の児童文学者、翻訳家です。静岡県静岡市葵区生まれ。静岡県立静岡商業学校、久我山工業専門学校を経て、慶應義塾大学文学部図書館学科を卒業後、米国のウェスタン・リザーブ大学大学院を修了しました。ニューヨーク公共図書館児童部勤務を経て、1975年まで慶應義塾大学文学部図書館学科教授を務めました。石井桃子さんを中心とする「ISUMI会」に携わったことがきっかけで、児童文学に関わるようになりました。日本国際児童図書評議会(JBBY)創立に尽力し、『寺町三丁目十一番地』で1969年に厚生大臣賞、1970年にサンケイ児童出版文化賞を受賞しました。

堀内 誠一(絵)

堀内誠一(ほりうちせいいち,1932年 – 1987年)さんは、東京府向島(現・墨田区)出身のグラフィックデザイナー、エディトリアルデザイナー、絵本作家です。父・堀内治雄も図案家で、堀内は幼少期からデザインに親しみました。14歳で伊勢丹百貨店に入社し、ウィンドウディスプレイやレタリングの仕事を担当。その後、アド・センター株式会社を設立し、雑誌『an・an』『POPEYE』『BRUTUS』『Olive』のロゴデザインを手がけました。また、絵本作家としても活躍し、『ぐるんぱのようちえん』や『たろうのおでかけ』など、多くの作品を残しました。1974年から1981年までフランス・パリ郊外に移住し、現地の文化や芸術にも触れ、パリ在住日本人向けミニコミ誌の創刊に参画しました。1987年に永眠されました。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は、おおよそ 4歳から が読み聞かせに向いていて、自分で読むなら 小学校低学年 あたりからがちょうどよいとされています。車や数に興味を持ち始める幼児から就学前、または小学校入学直後の子どもにはピッタリです。形や数を感覚的にとらえる力を育てるきっかけになります。

レビュー

この絵本、『くるまはいくつ?』は、数を覚え始めのこどもにとって、「車輪の数」という視点を取り入れることで、ただ数を追うだけでなく、観察力や物事を比べる力が育ちそうだなと思いました。堀内誠一さんのイラストは無駄がなく明快で、色や線で乗り物の形やタイヤの数が一目でわかるので、車好きな子どもならページをめくるたびに「あ、これ何輪だろう?」とワクワクするはずです。大人が読んでいても、当たり前と思っていた「車ってこういうものだ」という見方を問い直すような驚きがあって、新鮮に感じます。また、「1りんしゃ」「2つ」「3つ…」という数え方もリズムが良く、読み聞かせにも向いていると思います。ただ、3歳以下だと乗り物の種類や輪の概念がまだ難しいかもしれません。全体として、形・数・観察を自然に学べる素敵な絵本です。