『くじらのバース』は、作・絵ともに村上康成さんによる絵本で、2008年にひさかたチャイルドから刊行されました。南の島に住む少年ナリンと、毎年冬に南の海へ戻ってくるザトウクジラのバースは、なんと同い年!地球という大きな星の上で「今をともに生きている」その奇跡を、しんみり優しく描きます。美しい海や自然の色彩、そしてナリンとバースの静かな友情を感じる絵柄がとても印象的。ページをめくるたびに、命のつながりや普段気づかない“奇跡”にふれる、しっとりと心に響く一冊です。
略歴
村上 康成
村上康成(むらかみやすなり)さんは1955年岐阜県生まれ。魚や森など自然をテーマにした作品が多く、「自然派アーティスト」としても知られます。代表作に『ピンクとスノーじいさん』や『なつのいけ』などがあり、1995年には『ようこそ森へ』でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞。中川ひろたかさんとのコンビでも多くの絵本を手がけ、子どもたちの成長や日常をやさしく描き出しています。個展や講演活動も精力的に行い、絵本の魅力を広げ続けています。
おすすめ対象年齢
『くじらのバース』の対象年齢は、ピクトブックなどによれば主に 4歳〜7歳以上 とされています。静かな自然や命のつながりを感じるじっくり系の内容なので、感受性が豊かな幼児期にぴったり。ゆったりしたペースで読み聞かせを楽しみたいご家庭にもおすすめです。
レビュー
この絵本、ただただ美しくて静かな感動がじんわり染みる感じで、読み終わった後もしばらく余韻にひたれます。ナリンとクジラのバース、同じ年に生まれたという設定だけで、なんだか運命的でしみじみ。「地球でいま一緒に生きている」というテーマが壮大なのに、絵本の温かいタッチで優しく伝わるのが素敵です。自然の描き方も色彩も、見ているだけで心がほどけていくような…そんな気持ちにしてくれます。命やつながりを言葉少なく語る力強さに、読み聞かせする大人の心も満たされる一冊だなと思いました。


