
谷川俊太郎さんが文を、長 新太さんが絵を手がけた絵本『わたし』は、1981年に福音館書店から出版されました。 この作品は、主人公の「わたし」がさまざまな視点からどのように見られているかを描きます。例えば、男の子から見ると「女の子」、赤ちゃんから見ると「お姉ちゃん」、お母さんから見ると「娘のみちこ」、犬のごろうから見ると「人間」、宇宙人から見ると「地球人」といった具合です。これらの多様な視点を通じて、社会における自分の立ち位置や他者との関係性を楽しく理解することができます。
略歴
谷川俊太郎
谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう, 1931年-2024年)さんは、東京生まれの詩人、翻訳家、絵本作家です。1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、その独創的で感受性豊かな詩風が注目を集めました。以来、詩だけでなく、絵本や脚本、翻訳など多岐にわたる分野で多才な才能と日本文学への多大な貢献を物語っています。
絵本分野では、レオ・レオニの『スイミー』や『フレデリック』の翻訳で知られ、その簡潔で美しい日本語訳が作品に新たな命を吹き込みました。また、絵本『もこ もこもこ』や詩画集『ことばあそびうた』など、自身のオリジナル作品でも多くの読者に親しまれています。
受賞歴も多く、読売文学賞(1983年)、野間児童文芸賞(1988年)、朝日賞(1996年)など、国内外で高く評価されました。晩年には国際的な詩の賞も受賞し、日本文学の世界的な地位向上にも寄与しました。詩を通じて日常の深さを表現し続け、2024年に永眠しました。その作品と影響は、今も多くの人々に愛されています。
長 新太(絵)
長 新太(ちょう しんた,1927年 – 2005年)さんは、日本の漫画家・絵本作家・エッセイスト。東京都大田区出身。戦後、映画館の看板屋を経て、1948年に東京日日新聞の漫画コンクールで入選し、漫画家としてデビュー。その後、絵本作家としても活動を広げ、『ごろごろにゃーん』、『ぼくのくれよん』、『タコのバス』などユーモアあふれる作品を発表し、子どもから大人まで広く愛されました。1959年に文藝春秋漫画賞を受賞し、1994年には紫綬褒章を受章。2005年には『ないた』で日本絵本賞大賞を受賞。享年77歳。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は、4歳から6歳とされています。読み聞かせの場合は4歳から、自分で読む場合は小学校低学年からが適しています。
レビュー
『わたし』は、子どもたちに自己認識と他者との関係性を考えるきっかけを与える素晴らしい作品です。谷川俊太郎さんのシンプルで深い言葉と、長新太さんのユーモラスで親しみやすいイラストが融合し、子どもたちが楽しみながら自己と他者の視点を学べる構成になっています。背景を排したシンプルな絵は、読者の注意を「わたし」とその周囲の人物に集中させ、理解を深めます。また、宇宙人やキリンなど多様な視点を取り入れることで、子どもたちの想像力を刺激し、自己と他者の多様な関係性を考える手助けをしています。この絵本は、自己理解と社会性の発達に寄与するだけでなく、読者に新たな視点を提供する作品として、多くの人々に愛されています。