
フィフィ・クオ作・絵、まえざわあきえ訳の絵本『ぼくだってとべるんだ』は、空を飛びたいと願う小さなペンギンが主人公の物語です。彼は毎日飛ぶ練習をしますが、ある日滑って海に落ちてしまいます。そこへパパが助けに来て、一緒に海の中を初めて泳ぐ体験をします。氷と海の世界を表現し、柔らかいタッチで子どもの純粋な気持ちや見守る父親の姿を温かく描いています。
略歴
フィフィ・クオ
フィフィ・クオは、イギリスで活躍する絵本作家で、その作品は同国で高い人気を誇っています。彼女の絵本は、鮮やかな色彩と緻密な描写、そして温かみのあるストーリーが特徴です。台湾出身で、輔仁大学のランドスケープ学科で学んだ後、ケンブリッジ・スクール・オブ・アートで児童書のイラストを専攻。本作で絵本作家としてデビューし、有望な新人作家に贈られるクラウス・フリューゲ賞にノミネートされるなど、その才能が高く評価されています。彼女の作品は、生きることや成長することへの優しいまなざしに満ち、多くの読者の共感を呼んでいます。日本語版には『ぼくだってとべるんだ』『ぴーったり! キャンプのまき』『ぴーったり! ソファのまき』などがあります。
まえざわ あきえ(訳)
前沢明枝(まえざわ あきえ)さんは、日本の児童文学翻訳家、言語学者です。東京生まれで、アメリカのウェスタンミシガン大学で英米児童文学の学士号を取得し、ミシガン大学大学院で言語学の修士号を取得しました。 帰国後、英語圏の絵本や児童文学の翻訳を手掛けるとともに、大学で英語、翻訳、異文化コミュニケーションなどを教えています。 絵本の翻訳作に『ふとっちょねこ』や『ぼくだってとべるんだ』などがあります。 また、第4回外国絵本翻訳コンクール優秀賞を受賞するなど、その功績が評価されています。 さらに、産経児童出版文化賞入賞や、社会保障審議会児童福祉文化財の推薦図書に選ばれるなど、多くの受賞歴があります。
おすすめ対象年齢
『ぼくだってとべるんだ』の対象年齢は、主に幼児から低学年の子ども向けとされています。特に、3歳から5歳くらいの子どもに適しており、読み聞かせにもぴったりの絵本です。
レビュー
『ぼくだってとべるんだ』は、夢を追いかける小さなペンギンの姿が愛らしく、親子の温かい絆を感じられる素敵な絵本です。「飛びたい」というペンギンの願いは、子どもが持つ純粋な好奇心や挑戦心を象徴しており、成長する過程での小さな挫折や新しい発見を優しく描いています。シンプルながらも温もりのあるイラストは、白・黒・青の色彩を巧みに使い、南極の世界を幻想的に表現しています。また、最後に「飛ぶ」ことの意味が変わる展開も印象的で、新しい視点を得る喜びが伝わってきます。読み聞かせにも最適で、親子で共感しながら楽しめる一冊だと思いました。