
『おふろだいすき』は、松岡享子さんが文を、林明子さんが絵を手がけた絵本で、1982年に福音館書店から出版されました。主人公は男の子のまこちゃん。彼はお気に入りのあひるのプッカと一緒にひとりでおふろに入ります。湯気の中から現れるのは、さまざまな水の生きものたち—カメやペンギン、オットセイにカバ……。おふろの中で繰り広げられる想像の世界が、ユーモアと温かさにあふれたタッチで描かれています。
略歴
松岡享子
松岡享子(まつおかきょうこ,1935-2022)さんは、日本の児童文学研究者、翻訳家、図書館司書です。神戸女学院大学を卒業後、ウェスタン・ミシガン大学で修士号を取得されました。帰国後は、福音館書店に勤務し、東京都立日比谷図書館で児童サービスにも携わられました。1974年には「東京子ども図書館」を設立し、児童書の普及に尽力されました。代表作に『とこちゃんはどこ』『おふろだいすき』、また、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や「くまのパディントン」などの翻訳も手掛けられました。著作・翻訳は200冊以上にのぼり、文化功労者としても顕彰され、児童文学の発展に大きく貢献されました。
林 明子(絵)
林明子(はやし あきこ)さんは、日本の絵本作家・イラストレーターとして多くの人々に親しまれています。1945年、東京都に生まれ、大学でグラフィックデザインを学びました。卒業後はデザイン事務所で働き、そこでの経験を生かしつつ、1970年代から絵本のイラストを手がけるようになります。林さんの作品は、子どもたちの日常の生活や心の成長を細やかに描写することに定評があり、特に「こんとあき」「おつきさまこんばんは」「クリスマスの三つのおくりものセット」などは、親子で楽しめる定番の作品として愛されています。また、彼女の絵本は、物語の温かさと優しい色合いのイラストが調和しており、読む人に安心感と親しみを与える魅力があります。そのキャリアを通じて、林さんは数多くの賞を受賞し、日本の絵本界で非常に重要な存在となっています。彼女の作品は国内外で高く評価され、翻訳もされているため、世界中の子どもたちにも親しまれています。
おすすめ対象年齢
対象年齢は3~4歳から小学校低学年くらいが目安です。おふろが好きな子どもたちにとって親しみやすく、自分だけの空想世界を重ねながら楽しめる内容になっています。豊かな想像力を刺激しながら、身近な生活シーンを通して読書の楽しさを味わえる絵本です。
レビュー
おふろという日常の場面が、まこちゃんの豊かな想像力によって驚きと発見に満ちた冒険の舞台になるのが魅力です。次々と現れる海の生きものたちはどれもユーモラスで親しみやすく、林明子さんのやさしい絵がその世界に命を吹き込んでいます。プッカの存在も温かく、おふろの時間が楽しいひとときであることが伝わってきます。子どもがひとりでおふろに入るという成長の一歩も描かれており、親子で読むのにもぴったりの一冊です。