佐野洋子さんの『おれはねこだぜ』(1993年 講談社)は、ブラックユーモアが効いたナンセンス絵本です。鯖が大好物のねこが主人公。ある日、空をとぶ鯖の大群が現れ、ねこに襲いかかってきます。大好きなものが一転して脅威となるという奇想天外な展開に、子どもは笑いながら驚き、大人はどこかシュールなユーモアを感じるはずです。佐野洋子さん特有の力強い筆致とリズミカルな言葉が、物語の不思議さと楽しさを引き立てています。シンプルなストーリーながら、読後にはちょっと考えさせられる余韻も残る一冊です。
略歴
佐野 洋子
佐野 洋子さん(さの ようこ、1938年 – 2010年)は、日本の絵本作家、エッセイスト、翻訳家として知られています。中国・北京で生まれ、幼少期を北京や大連で過ごしました。戦後、家族とともに日本に引き揚げ、山梨県や静岡県で育ちました。武蔵野美術大学デザイン科を卒業後、白木屋デパートの宣伝部でデザイナーとして勤務しました。その後、ドイツのベルリン造形大学でリトグラフを学び、帰国後に絵本作家としての活動を開始しました。代表作『100万回生きたねこ』(1977年)は、哲学的な内容で大人からも高い評価を受けています。また、エッセイや『ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス』の翻訳など海外絵本の翻訳も手がけ、多彩な才能を発揮しました。2003年には紫綬褒章を受章し、2004年にはエッセイ集『神も仏もありませぬ』で小林秀雄賞を受賞しています。
おすすめ対象年齢
『おれはねこだぜ』は、4歳ごろから小学校低学年くらいの子どもにおすすめの絵本です。ナンセンスなお話なので、小さな子どもはシンプルに「おもしろい!」と楽しめますし、小学生や大人はその裏にあるユーモラスな皮肉や不思議さを味わえます。年齢によって受け取り方が変わるので、親子で一緒に楽しめる作品です。
レビュー
読みながら思わず「こんな発想ある?」と笑ってしまいました。ねこにとって大好物の鯖が、まさか空から襲いかかってくるなんて、佐野洋子さんらしい大胆でユニークな展開です。シンプルに楽しめるナンセンスさの中に、大好きなものも度を超えると怖い存在になる、という風刺的な視点も感じました。ねこのキャラクターが自由奔放で堂々としていて、読んでいて爽快感もあります。子どもは笑いながら楽しめ、大人は「なるほど」とうなずける不思議な魅力が詰まった絵本だと思いました。


