鈴木まもるさんの『だんろのまえで』(2008年 教育画劇)は、雪の山道で迷った少年が、大きな木のドアを開けると、暖かなだんろを囲む動物たちに出会うお話です。冷たい自然の中での不安や孤独が、火のぬくもりと仲間の存在によって癒やされていきます。実際に自然の中で暮らす作者が、自らの体験を重ねて描いた絵本で、読む人に安心感や「そのまま受け入れられる」あたたかさを届けてくれます。冬の寒さの中でも心をぽかぽかにしてくれる一冊です。
略歴
鈴木 まもる
鈴木まもるさんは1952年東京生まれ。東京芸術大学工芸科を中退後、1980年に『ぼくの大きな木』で絵本作家としてデビュー。作品数は200冊以上にのぼります。1995年に「黒ねこサンゴロウ」シリーズで赤い鳥さし絵賞を、2006年に『ぼくの鳥の巣絵日記』で講談社出版文化賞絵本賞、2015年には『ニワシドリのひみつ』で産経児童出版文化賞JR賞など数々の受賞歴あり。伊豆半島に在住し、画家・絵本作家として活動する傍ら、鳥の巣研究家として収集・展覧会・講演なども行っています。
おすすめ対象年齢
『だんろのまえで』は、幼児から小学校低学年くらいまでを対象におすすめされる絵本です。文字数は多すぎず、イラストが物語をしっかりと補ってくれるので、読み聞かせにもぴったり。特に冬の季節に読むと、子どもたちが絵本の中のぬくもりを一層感じられるでしょう。
レビュー
この絵本を読んで一番心に残ったのは、「火を囲む安心感」と「受け入れてくれる存在のありがたさ」です。雪の中で疲れ果てた少年が、だんろの炎や動物たちと過ごす時間によって元気を取り戻す姿に、日常の中で私たちが必要としている“ひと休みできる場所”を重ねてしまいました。シンプルなお話ながら、深いメッセージが込められていて、大人にもじんわり響きます。冬の夜に、親子で一緒に読みたくなる一冊です。