もりのなか/マリー・ホール・エッツ

マリー・ホール・エッツさんが文と絵、まさきるりこさんが訳を手がけた絵本『もりのなか』です。ラッパを持った男の子が森でライオンやゾウ、クマなどたくさんの動物たちと出会い、一緒に楽しく遊ぶ物語です。幻想的なモノクロの絵が、男の子の想像の世界を美しく表現しています。初版原題は『In the Forest』、初版発行国はアメリカ、初版発行年は1944年で、日本語版は1963年に福音館書店から出版されました。1945年のコールデコット賞オナーブックにも選ばれた、世界中で愛されている傑作です。

略歴

マリー・ホール・エッツ

マリー・ホール・エッツ(1895年 – 1984年)さんは、アメリカの児童文学作家・絵本作家です。1950年代から60年代にかけて活躍し、数々の名作を世に送り出しました。特に、動物や子どもたちの素直な心情を描くのが得意で、その温かくユーモラスな作風は多くの人々に愛されています。代表作としては、コールデコット賞を受賞した『もりのなか』や、同じくコールデコット賞を受賞した『クリスマスまで9日』(1959年)などがあります。日本語に翻訳された作品も多く、日本でも長年にわたり愛され続けている作家さんです。

まさき るりこ(訳)

まさきるりこ(間崎ルリ子)さんは、1937生まれの長崎県出身の翻訳家です。慶應義塾大学を卒業された後、アメリカに渡り、ボストンの大学院で図書館学を学びました。その後、ニューヨークの公共図書館児童室で勤務された経験をお持ちです。1964年に『いたずらこねこ』(福音館書店)の翻訳を担当し、その後もリズム感ある日本語と読みやすさで親子に親しまれています。1968年からは、ご自身で神戸市に私設の児童図書館「鴨の子文庫」を設立し、47年間も主宰されました。また、東京子ども図書館の評議員や理事も務められています。翻訳家として『もりのなか』の他にも、多くのの絵本を翻訳されているそうです。彼女の翻訳によって、多くの素晴らしい海外の絵本が日本に届けられてきました。

おすすめ対象年齢

この絵本は、だいたい3歳くらいから楽しめると思います。物語自体は想像の世界のお話なので、子どもたちの自由な発想を育むのにぴったりです。また、絵はモノクロが中心で、落ち着いた雰囲気が漂っているので、寝る前の読み聞かせにもおすすめです。かくれんぼをして、最後はお父さんが迎えに来るという結末は、子どもたちに安心感を与えてくれるはずです。

レビュー

この絵本、初めて読んだとき、その幻想的なモノクロの世界観にすごく引き込まれました。白い紙の上に、黒い線だけで描かれた森や動物たち、そして男の子が、まるで夢の中の出来事のように素敵です。動物たちと無邪気に遊ぶ男の子の姿が可愛らしくて、見ているだけで心が和みました。最後の、お父さんが迎えに来て、男の子を肩車する場面は、愛に満ちていて、本当に温かい気持ちになります。何度読んでも新しい発見がある、そんな魅力的な絵本でした。