
もしも一日だけ、昆虫になれるとしたら?──『いちにちこんちゅう』(PHP研究所・2016年)は、そんな夢のような体験を絵本の中で叶えてくれる作品です。主人公の男の子がカブトムシやチョウ、トンボなど、さまざまな昆虫に変身しながら、その暮らしを全身で体験していきます。虫の視点で見る世界の面白さ、ユニークな生態、そして思わず笑ってしまうオチまで、遊び心が満載。かわしまななえさんの躍動感あふれるイラストと、ふくべあきひろさんのテンポよい文が絶妙にかみ合った、学びと笑いが同居する一冊です。
略歴
ふくべ あきひろ
ふくべ あきひろ(福部 明浩)さんは、1976年兵庫県生まれのコピーライター・絵本作家です。京都大学工学部を卒業後、1998年に博報堂に入社し、コピーライターとして数々の広告賞を受賞しました。2013年に独立し、クリエイティブオフィス「catch」を設立。2009年に絵本『いちにちおもちゃ』で作家デビューし、以降「いちにち」シリーズを中心に、子どもたちの想像力を刺激するユーモアあふれる作品を多数手がけています。彼の作品は、日常の中にあるユニークな視点や発想を通じて、読者に新たな気づきや楽しさを提供しています。
かわしま ななえ(絵)
かわしまななえ(川嶋ななえ)さんは、1983年東京都生まれの絵本作家・アートディレクターです。東京造形大学を卒業後、多摩美術大学大学院を修了し、2008年に広告会社・博報堂に入社。アートディレクターとして活動する傍ら、2009年にふくべあきひろさんとの共作『いちにちおもちゃ』で絵本作家としてデビューしました。以降、「いちにち」シリーズ全作品のイラストを担当し、独特のユーモアと温かみのある作風で多くの読者を魅了しています。歌舞伎をこよなく愛し、キジトラ猫の松と梅を飼うなど、日常の中の豊かな感性が作品に反映されています。
おすすめ対象年齢
『いちにちこんちゅう』は、保育園・幼稚園の未就学児から小学校低学年の子どもたちを対象としています。昆虫に関する興味を引き出し、楽しく学べる内容となっており、読み聞かせにも最適です。
レビュー
この絵本を読んで感じたのは、「なってみる」ことで理解が深まるという楽しさです。カブトムシの強さやチョウの羽ばたき、フンコロガシの健気な働きまで、どれも身近な虫たちの意外な一面に光を当ててくれます。リアルすぎず怖すぎず、でもしっかり特徴をとらえている描写は、子どもにとっても入りやすく、大人にとっても発見があります。「虫ってすごい!」という純粋な感動を、笑いと共に味わえる貴重な一冊だと思います。