『ぼくのだ!わたしのよ!』(原題:It’s Mine!)は、レオ・レオニが1986年にアメリカで発表した絵本です。翻訳は谷川俊太郎さんが手がけ、日本語版は好学社から1989年に刊行されました 。舞台は平和な池のほとり。そこで暮らす3匹のかえるたちは、いつも「ぼくのだ!」「わたしのよ!」とけんかばかり。ある日、大きな嵐がやってきて…?互いに助け合うことの大切さをユーモラスに描いた、友情と協調の物語です。
略歴
レオ・レオニ
レオ・レオニ(Leo Lionni, 1910-1999)は、オランダのアムステルダムで生まれた絵本作家であり、デザイナー、芸術家です。幼少期をオランダやイタリア、アメリカで過ごし、大学では経済学を学びましたが、後にアートの道へ進みました。アメリカに移住し、広告業界で成功を収める一方、モダンアートにも深い関心を寄せました。50歳を過ぎてから絵本作家としての道が開かれます。彼の作品は、美しいコラージュや温かいストーリーが特徴で、『スイミー』『フレデリック』『アレクサンダとぜんまいねずみ』などが代表作です。子どもたちに創造力や多様性の大切さを伝える名作を多く残しました。
谷川俊太郎(訳)
谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう, 1931年-2024年)さんは、東京生まれの詩人、翻訳家、絵本作家です。1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、その独創的で感受性豊かな詩風が注目を集めました。以来、詩だけでなく、絵本や脚本、翻訳など多岐にわたる分野で多才な才能と日本文学への多大な貢献を物語っています。
絵本分野では、レオ・レオニの『スイミー』や『フレデリック』の翻訳で知られ、その簡潔で美しい日本語訳が作品に新たな命を吹き込みました。また、絵本『もこ もこもこ』や詩画集『ことばあそびうた』など、自身のオリジナル作品でも多くの読者に親しまれています。
受賞歴も多く、読売文学賞(1983年)、野間児童文芸賞(1988年)、朝日賞(1996年)など、国内外で高く評価されました。晩年には国際的な詩の賞も受賞し、日本文学の世界的な地位向上にも寄与しました。詩を通じて日常の深さを表現し続け、2024年に永眠されました。その作品と影響は、今も多くの人々に愛されています。
おすすめ対象年齢
対象年齢はおおよそ3歳から7歳程度とされています。カラフルでシンプルな挿絵は幼児にも親しみやすく、繰り返しのセリフや展開は読み聞かせにも適しています。一方で、けんかや協力といったテーマは、幼稚園〜小学校低学年の子どもたちにも深く響く内容です。人間関係の基礎となる“分かち合い”の概念を、楽しく学べる構成です。
レビュー
レオ・レオニらしいコラージュと彩り豊かな構成が美しく、声に出して読むとリズムも楽しい一冊でした。3匹のかえるたちのやりとりは、まるで子どもたちそのもの。自分のことばかり主張していた彼らが、嵐をきっかけに他者を思いやる心に目覚めていく過程は、シンプルながらも深いメッセージを感じさせます。絵本を通して、分かち合うことの喜びや、友だちと協力することの大切さを自然に伝えてくれる、とても温かい物語でした。