おしりだよ/乾 栄里子

乾栄里子さん作、西村敏雄さん絵の絵本『おしりだよ』(2016年 教育画劇)は、ユーモアとあたたかさが詰まった一冊です。ある日、むーちゃんがお風呂でおしりを洗っていると、うしろから声が! そこから、むーちゃんと“おしり”の特別な毎日がはじまります。まるで友だちのように語りかけてくるおしりと過ごす日々は、不思議だけれど楽しくて心がほっこり。教育画劇の紹介でも「誰にだってあるかもしれない、自分とおしりの思い出」とユーモアたっぷりに語られており、子どもも大人も笑いながら楽しめる絵本になっています。

略歴

乾 栄里子

乾栄里子(いぬいえりこ)さんは1964年東京都生まれで、東京造形大学デザイン科を卒業後、インド・バナスタリ大学でテキスタイルを学んだクリエイターです。『バルバルさん』で絵本作家デビュー。他にも、『ぽんこちゃん ポン!』『パックン バーガーくん』(以上、絵:西村敏雄)、『おわんわん』(絵:100%ORANGE)、『つられたらたべちゃうぞおばけ』など多彩な作品を手がけています。

西村 敏雄(絵)

西村敏雄(にしむらとしお,1964年愛知県生まれ)は、東京造形大学デザイン科卒。家具やテキスタイルのデザイン仕事を経て絵本作家に転身し、第1回日本童画大賞最優秀賞を受賞。代表作に『バルバルさん』『もりのおふろ』『どうぶつサーカスはじまるよ』など多数あり、キャッチーで温かみのある絵が特徴です。『いろいろおふろはいり隊!』でも、野菜キャラたちに豊かな表情とユーモアを与え、読者をぞの世界へ引き込みます。インタビューでは「人の顔や日常のちょっとした表情にヒントを得る」と語っており、親しみのある作風の背景がうかがえます。

おすすめ対象年齢

対象年齢はおおむね3歳から小学校低学年くらいまでとされています。おしりというテーマは小さな子どもにとって身近で面白く、思わず声をあげて笑ってしまう内容です。絵はやさしく親しみやすいタッチで、ユーモラスながら下品にならない表現になっているので、読み聞かせにもぴったり。少し大きい子どもが自分で読む場合も、くすっと笑いながら楽しめる作品です。

レビュー

最初にタイトルを見ただけで「どんな絵本?」と気になる作品ですが、読んでみると単なるおふざけではなく、むーちゃんと“おしり”のやりとりがユーモラスに描かれながら、どこか心が温まる物語でした。おしりが話しかけてきたり、一緒に遊んだりする場面は思わず笑ってしまいますが、同時に「自分の体も大切な友だちのように感じられる」というメッセージも伝わってきます。西村敏雄さんの表情豊かなイラストが、むーちゃんの驚きや楽しさをさらに引き立てていて、子どもと一緒に読むと大人もクスッと笑えるはず。笑いながらも安心感に包まれる、ちょっと不思議で愛らしい絵本だと思いました。