『かえるくんのたからさがし』(原題:Kikker vindt een schat)は、オランダのマックス・ベルジュイスによる人気シリーズの一冊。オランダで2002年に初めて出版されました。日本語版は清水奈緒子さんの訳で、2005年にらんか社から刊行されました。かえるくんとこぐまくんが“宝さがし”をしようと穴を掘ると、なんとその穴は予想以上に深くて二人とも抜け出せなくなってしまいます。そこで歌ったり励まし合ったりしながら一晩を過ごし、翌朝、仲間たちの助けで無事脱出。宝とは物ではなく、お互いを思いやる気持ちだと気づく、ほっこり温まるお話です。シンプルな設定と色鮮やかな絵で、子どもだけでなく大人にもじんわり響く名作です。
略歴
マックス・ベルジュイス
マックス・ベルジュイス(Max Velthuijs, 1923–2005)はオランダのデン・ハーグ生まれ。元々はグラフィックデザインや広告の仕事に携わっていましたが、1962年に絵本の挿絵家としてデビュー。「かえるくん」シリーズで国際的に注目され、以降20点以上のシリーズが登場。2004年にはイラストと文章の両方の功績が評価され、児童文学の最高賞である国際アンデルセン賞を受賞。ベルジュイスの描くかえるくんは「友情や自己肯定」をやさしく伝える現代の寓話として世界中で親しまれています。
清水 奈緒子(訳)
清水奈緒子(しみずなおこ,1965年生まれの静岡県出身)さんは日本の絵本翻訳家として知られています。『すごいぞかえるくん』をはじめ、1990年代〜2000年代にかけてらんか社から出版された「かえるくん」シリーズを多くを訳しました。原作のやさしい世界観やユーモアを壊さず、日本の子どもたちにも自然に伝える翻訳力には定評があります。絵本業界での活躍は長く、子ども文化に貢献している翻訳者です。
おすすめ対象年齢
対象は3歳〜6歳くらいが目安です。穴に閉じ込められる緊張感や、仲間と助け合う場面は、幼児期にぴったりのスリルと安心感を提供します。絵もストーリーもあまり複雑ではないので、読み聞かせに最適。友情や協力の大切さが自然に伝わるため、保育園や家庭で繰り返し読みたくなる一冊です。
レビュー
この絵本、まず穴を掘るという単純な遊びが「こんなに深くなるなんて!」と予想外に展開して、そのギャップが面白いです。かえるくんとこぐまくんが抜け出せない中でも、歌い合って励まし合う姿に自然と心が温かくなりました。宝って、お金やおもちゃじゃなくて、こういう“心のつながり”なんだな、と気付かせてくれるところが最高です。最後に仲間が駆けつけてくれる場面は、ほろりと感動。子どもの想像力や感性を育みます。大人も最後に見つかる一億年以上前のピカピカの石に心奪われないで「本当の宝って?」を考えさせられる、じんわり深いラストシーンです。