『まんまる おつきさまを おいかけて』は、アメリカの作家ケビン・ヘンクス(Kevin Henkes)による、月に魅せられた子猫の冒険を描いた絵本。原題は”Kitten’s First Full Moon”で、2004年にアメリカ(Greenwillow Books)から出版され、2005年に福音館書店より日本語版が刊行されました。初めて見る満月をミルクの皿と勘違いした子猫が、それを追いかけていく姿がモノクロームで描かれ、幻想的でユーモラス。小さな存在の大きな挑戦が、読者の心をつかみます。本作はコールデコット賞を受賞し、世界中で高く評価されています。
略歴
ケビン・ヘンクス
ケビン・ヘンクス(Kevin Henkes)は1960年、アメリカ・ウィスコンシン州生まれ。作家・イラストレーターとして数多くの絵本や児童文学を手がけています。『リリーのぼうし』や『ふつうに学校へいくふつうの日』など、子どもたちの気持ちに寄り添う繊細な作風が特徴。2005年に『Kitten’s First Full Moon』でコールデコット賞を受賞。静かで優しいストーリーテリングと温かみあるイラストで、世界中にファンの多い作家です。
小池 昌代(訳)
小池昌代(こいけ・まさよ)さんは1959年東京都生まれの詩人・小説家・翻訳家。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業後、詩集『永遠に来ないバス』(1997年)でで第15回現代詩花椿賞を受賞。鋭い感性と深い洞察を持ち味に、詩やエッセイ、小説のほか翻訳も多数手がけています。特に日常のなかの哲学や心の揺れを捉える表現力に定評があります。訳書には、ケビン・ヘンクスの『まんまるおつきさまをおいかけて』なども。翻訳では原作の雰囲気を損なわず、やわらかく詩的な日本語に仕上げるのが特徴で多彩な文学世界を展開しています。
おすすめ対象年齢
この絵本は、3歳ごろから小学校低学年くらいまでの子どもにぴったり。シンプルな文と大きな絵が、小さな子どもでも理解しやすく、絵だけでも物語が伝わる力強さがあります。好奇心いっぱいの子猫の姿に共感し、自分と重ねて楽しめる年頃におすすめです。
レビュー
最初にこの絵本を開いたとき、モノクロの絵にドキッとしました。でも読んでいくうちに、その静かな世界が子猫の一途な気持ちをぐっと引き立ててくれることに気づきます。ミルクを求めて満月を追うなんて、子猫らしい発想にクスッと笑い、途中の失敗にはちょっぴり切なくなります。けれど最後には温かなオチが待っていて、安心感と満足感が残る読後感。シンプルでやさしいのに、深く印象に残る名作です。大人も癒される一冊でした。