『うさこちゃんとあかちゃん』は、オランダの絵本作家ディック・ブルーナによる絵本で、原題は Nijntje krijgt een broertje(オランダ、2003年発行)。うさこちゃん家に赤ちゃんがくるという、家族が増える喜びを描いたストーリーです。日本語版は、福音館書店から2005年に出版され、訳はまつおかきょうこさん。赤ちゃんを迎えるお姉さんとしての期待、やさしい気持ちが、ブルーナのシンプルな絵と詩のような訳文でやさしく綴られています。
略歴
ディック・ブルーナ
ディック・ブルーナ(Dick Bruna、1927年〜2017年)は、オランダ・ユトレヒト生まれの絵本作家・グラフィックデザイナー。父の出版社でデザインの仕事をするかたわら、1953年ごろから絵本制作を開始。代表作は「うさこちゃん」シリーズで、世界的に知られるキャラクター「ミッフィー(nijntje)」を誕生させました。ミニマルな線と明快な色づかいで、子どもから大人まで長く愛されています。著作は50か国以上で翻訳され、総発行部数は8500万部以上にのぼります。
松岡 享子(訳)
松岡享子(まつおかきょうこ,1935-2022)さんは、日本の児童文学研究者、翻訳家、図書館司書です。神戸女学院大学を卒業後、ウェスタン・ミシガン大学で修士号を取得されました。帰国後は、福音館書店に勤務し、東京都立日比谷図書館で児童サービスにも携わられました。1974年には「東京子ども図書館」を設立し、児童書の普及に尽力されました。代表作に『とこちゃんはどこ』『おふろだいすき』、また、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や「くまのパディントン」などの翻訳も手掛けられました。著作・翻訳は200冊以上にのぼり、文化功労者としても顕彰され、児童文学の発展に大きく貢献されました。
おすすめ対象年齢
対象年齢は「読んであげるなら2歳ころから」。特に弟や妹が生まれる予定のある子にぴったりです。赤ちゃんが来ることで、うれしい気持ちを、やさしく言葉にしてくれる絵本。短い文章とシンプルな絵なので、小さなお子さんでも内容がしっかり伝わります。
レビュー
赤ちゃんの誕生を待ちながら、うさこちゃんがカラフルな絵を描き、毛糸で小さなネズミのぬいぐるみを編む姿がとても愛らしい。ページをめくるごとに準備が進み、生まれたばかりの赤ちゃんをそっと抱っこさせてもらうシーンでは、読んでいるこちらまで胸がぽっと温かくなる。ブルーナのはっきりした色と線が家族の喜びをシンプルに伝えてくれて、読み終えると「自分も何か作ってあげたい!」という気持ちがむくむく。出産祝いに添えて贈りたくなる、優しさが詰まった一冊。