きょうだいぎつねの コンとキン/村山 桂子

『きょうだいぎつねの コンとキン』は、村山桂子さん作・岡田千晶さん絵による心温まる絵本で、2018年にフレーベル館から刊行されました。森で迷子になった小さな女の子に出会ったコンとキンという兄妹ぎつねが、女の子を家まで送ろうと奮闘する物語です。お母さんぎつねの「人間には気をつけるんだよ」の言いつけを胸に、キツネと人間の境界を越えた友情と優しさで結ばれる関係が、とても素敵に描かれています。
森の穏やかな雰囲気や兄妹のけなげさが岡田さんの優しいタッチで表現されていて、絵本を閉じたあともじんわり心に残る一冊です。

略歴

村山 桂子

村山桂子(むらやまけいこ)さんは1930年、静岡県ご出身です。文化学院卒業後、お茶の水女子大学の幼稚園教員養成課程を修了し、1965年まで幼稚園の先生として勤務していました。その後、作家の道に進み、『おかえし』『たろうのおでかけ』『たろうのひっこし』などこどものともシリーズで多数の作品を発表。幼稚園での経験を活かした言葉と感性で、子どもたちの日常や心象を丁寧に描く絵本作家として親しまれています。

岡田 千晶(絵)

岡田千晶(おかだちあき)さんは大阪府出身、セツ・モードセミナー卒の絵本作家・イラストレーター。2010年にはボローニャ国際絵本原画展に入選した実力派です。代表作品には、『うさぎくんとはるちゃん』(岩崎書店)、『もうすぐもうすぐ』(教育画劇)、『ひだまり』(光村教育図書)、『しゃっくりくーちゃん』(白泉社)など多数あります。日常の何気ない仕草や表情を大切に描くスタイルで、優しいタッチに心がほっこりします。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は 4歳~6歳くらいにぴったりです。優しい友情の物語を理解し始める幼児期にちょうどいいボリューム。また、動物と人間との関係というテーマは、感受性の豊かなこの年齢でこそ心に響きやすく、親子の読み聞かせタイムにもおすすめです。

レビュー

この絵本は、読んでいるとキツネ兄妹・コンとキンの優しさがじんわり胸に響いてきます。お母さんから「人間には気をつけるんだよ」と言われていたのに迷子になった女の子を助ける姿に、「ほんとに優しい…」ってうるっとくるほど。岡田千晶さんの絵は柔らかな色で描かれていて、森の緑やキツネたちの表情がすごくあたたかい雰囲気。小さい子だけでなく、大人も「人を思う気持ちって素敵だな」って改めて気づかされそう。本当に支え合う関係ってこういうことだよね、と思える、穏やかで温かい一冊でした。