星の王子さま/アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

『星の王子さま』(原題:Le Petit Prince)は、フランス人飛行士で作家のサン=テグジュペリによる珠玉の物語。1943年にアメリカで英語&フランス語併記で初出版され、1946年にフランスで刊行されました。日本語版は内藤濯(ないとう あろう)さんによる抒情的な訳で、岩波書店から1953年に初めて刊行され、以来長く愛されています。物語は砂漠に不時着した飛行士が、“星の王子”と出会い、友情や大切なものを見つめ直す哲学的なファンタジー。挿絵も作者自身が手がけており、詩情あふれる世界観と共に、読み手の心に深く響く一冊です。

略歴

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(Antoine de Saint-Exupéry、1900年~1944年)は、リヨン出身の飛行士・作家・詩人。1920年代初めに商業飛行士としてフランス国内外(ヨーロッパ、アフリカ、南米など)の郵便飛行に従事し、その体験が多くの著作に生かされました。飛行体験を描いた作品『南方メール』『夜間飛行』『人間の土地(邦題:夜と霧と砂と星)』などで国際的評価を獲得。1943年に『星の王子さま』を執筆、世界的ベストセラーに。1944年、第二次大戦中の偵察飛行任務中に地中海で消息を絶ち、その謎に包まれた最期も伝説となっています 。

おすすめ対象年齢

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』は、一般的に8歳以上の小学生から大人まで幅広い年齢層に適した絵本とされています。物語の中心には、シンプルで親しみやすいストーリーが描かれていますが、友情や愛、自己の理解、孤独といった哲学的なテーマが込められているため、年齢によって異なる視点で楽しむことができる作品です。また、大人になってから読むと、人生経験に基づいた共感が生まれ、心に響く教訓や深い洞察を得られるため、多くの人が再読を重ねる作品となっています。そのため、『星の王子さま』は「子ども向け」ではあるものの、実際には全年齢を対象に楽しめる物語です。

レビュー

『星の王子さま』はシンプルでありながら、読むたびに新たな気づきがある魔法のような絵本。友情や愛、美しさと孤独、責任や大人の世界への視点が象徴的に描かれています。飛行士と王子の対話は詩的で、何度も読み返したくなる深い言葉が散らばっていて、頁をめくるたび心が震えます。内藤濯さんの訳も非常に洗練されていて、日本語でもその抒情的な世界がしっかりと伝わるのが素晴らしい。挿絵の淡い水彩画も、作品の幻想感をさらに引き立てています。子ども時代に戻るようなトリップ感があり、大人になった今こそ読むべき“人生の教科書”のように感じました。