『てがみのえほん』は、作・絵:堀内誠一さんによるユーモアたっぷりの絵本で、福音館書店より2021年に刊行されました。物語は「こどものとも」が200号を迎えたことをお祝いする設定で、世界中から12通の手紙が届きます。お菓子の家に住む魔女グリンダや、汽車を集める巨人国のトロル、透明な幽霊や月面都市建設中のロボットなど、ユニークな仲間たちからのお便りはどれも楽しく個性的です。さらに、イーハトーブの動物たちや「こどものとも」の仲間たちも登場し、お祝いを盛り上げます。ページごとに異なる画風で描かれており、パロディ精神や遊び心にあふれた作品で、手紙を読む楽しさとともに想像力を広げてくれる絵本です。
略歴
堀内 誠一
堀内誠一(ほりうちせいいち,1932年 – 1987年)さんは、東京府向島(現・墨田区)出身のグラフィックデザイナー、エディトリアルデザイナー、絵本作家です。父・堀内治雄も図案家で、堀内は幼少期からデザインに親しみました。14歳で伊勢丹百貨店に入社し、ウィンドウディスプレイやレタリングの仕事を担当。その後、アド・センター株式会社を設立し、雑誌『an・an』『POPEYE』『BRUTUS』『Olive』のロゴデザインを手がけました。また、絵本作家としても活躍し、『ぐるんぱのようちえん』や『たろうのおでかけ』など、多くの作品を残しました。1974年から1981年までフランス・パリ郊外に移住し、現地の文化や芸術にも触れ、パリ在住日本人向けミニコミ誌の創刊に参画しました。1987年に永眠されました。
おすすめ対象年齢
『てがみのえほん』は、5歳くらいから小学校低学年の子どもにおすすめの絵本です。登場する手紙やキャラクターの背景にユーモアやパロディが込められているので、読み解く楽しさを味わえる年齢にぴったりです。文字量もやや多いため、一人で読める子には冒険物語のように楽しめますし、大人が読み聞かせると一緒に想像を広げて盛り上がれる作品です。
レビュー
『てがみのえほん』を読んでまず感じたのは、絵と文の多彩さによる驚きでした。12通の手紙に込められた世界観はひとつひとつ個性豊かで、ページをめくるたびに「次はどんな手紙だろう」とワクワクします。幽霊や巨人、ロボットといったユニークなキャラクターが、堀内誠一さんの遊び心あふれる絵で描かれているのも見どころです。大人にとってもパロディやオマージュを感じさせる場面が多く、絵本という枠を超えて楽しめました。読み終えると、「手紙」という形で広がる物語の魅力を再発見でき、親子で読むと会話が自然と弾む一冊だと思います。


