いもとようこさんが絵と文を手掛けた絵本『にんぎょひめ』は、アンデルセンの名作を基に、2012年に日本の金の星社から出版されました。原作のデンマーク語タイトルは「Den Lille Havfrue」で、1837年にデンマークで初めて発表されました。この絵本では、人間の王子を愛した人魚姫が、声と引き換えに足を得て人間界で生活しますが、思いを伝えられず、最終的に海の泡となる切ない物語が描かれています。いもとさんの温かみのあるイラストと優しい文章が、原作の持つ悲しさや切なさを子どもにも伝わりやすく表現しています。
略歴
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen,1805年 – 1875年)は、デンマークのオーデンセに生まれた童話作家・詩人です。貧しい靴職人の子として生まれ、幼少期から物語に親しみました。俳優を志してコペンハーゲンへ移るも挫折し、その後作家としての道を歩み始めます。30歳の時、イタリア旅行の体験を綴った『即興詩人』を出版し、作家として認められました。その後、『おやゆびひめ』、『人魚姫』、『マッチ売りの少女』、『みにくいあひるの子』、『はだかの王さま』など、150編以上の童話を発表し、世界中で愛されています。
いもとようこ
いもとようこさん(本名:井本蓉子)は、1944年兵庫県生まれの絵本作家・挿絵画家です。金沢美術工芸大学油絵科を卒業後、小学校教員を経て絵本の世界に入りました。独自の貼り絵技法で温かみのある作品を多数手がけ、出版された絵本は400冊以上にのぼります。主な受賞歴として、1985年度『ねこの絵本』、1986年度『そばのはなさいたひ』でボローニャ国際児童図書展エルバ賞を2年連続受賞しています。ちぎった和紙の貼り絵に着色する独自の技法で、柔らかく温かな表情の人物や動物を描き、創作童話や日本の昔話、世界の名作など多くの絵本を手がけ国際的にも高く評価されています。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は、出版社のおすすめとして3歳から5歳程度となっています。しかし、物語の内容には悲しさや切なさが含まれるため、読み聞かせる際には子どもの理解度や感受性を考慮することが大切です。大人が一緒に読み、物語のテーマや感情について話し合うことで、子どもの心に深く響く読書体験となるでしょう。
レビュー
いもとようこさんの『にんぎょひめ』は、原作の持つ悲しみや切なさを、彼女独特の温かみのあるイラストと優しい文章で見事に表現しています。人魚姫の純粋な愛と犠牲の物語が、読む人の心に深く訴えかけます。特に、いもとさんの描く人魚姫の表情や情景描写は、読者の感情を揺さぶり、物語の世界に引き込まれます。子どもだけでなく、大人も共感し、心に残る一冊です。