だるまちゃんとてんぐちゃん/かこ さとし

かこさとし作の『だるまちゃんとてんぐちゃん』は、1967年に初版が発行された日本の絵本です。この作品は、だるまの子ども「だるまちゃん」と、憧れの存在である「てんぐちゃん」との心温まる交流を描いた物語です。だるまちゃんがてんぐちゃんに近づこうと努力する姿や、工夫を凝らして「てんぐちゃんのマネ」をするユーモラスな描写が、子どもたちに自己表現や工夫の大切さを伝えます。シンプルながらも奥深いテーマと、美しく細やかな挿絵が印象的で、発行から半世紀を超えてもなお多くの読者に愛されています。友情や個性を尊重する大切さを学べる一冊です。

かこ さとしの略歴

かこ さとし(1926年 – 2018年)は、福井県今立郡国高村(現・越前市)生まれの絵本作家、児童文学作家です。東京大学工学部を卒業後、化学技術者として働くかたわら、児童文化活動に従事しました。1959年に自費出版した絵本『だむのおじさんたち』が注目され、その後多くの絵本を世に送り出しました。代表作『からすのパンやさん』(1973年)をはじめ、『だるまちゃんとてんぐちゃん』のだるまちゃんシリーズや科学絵本など、幅広いテーマで多くの名作を生み出しました。

かこ さとしさんの作品は、子どもの視点に立った優しい語り口や、精密で温かみのあるイラストが特徴です。また、科学的知識をわかりやすく解説した本も数多く手がけ、子どもたちの好奇心を刺激しました。亡くなるまで創作を続け、生涯で600冊以上の作品を発表しました。彼の絵本は、日本のみならず世界中で愛され続けています。

おすすめ対象年齢

対象年齢は、おおむね3歳から小学校低学年頃までとされています。物語の中で描かれるだるまちゃんの工夫や憧れの心、そしててんぐちゃんとの心温まる交流は、小さな子どもたちの共感を呼び、想像力を育てます。また、細やかで美しい挿絵は、読み聞かせにも最適で、言葉がまだ難しい幼児にも楽しめます。一方で、自己表現や個性を考えさせるテーマは、小学校低学年の子どもたちにも深く響く内容です。

レビュー

『だるまちゃんとてんぐちゃん』は、心温まる友情の物語と創意工夫の大切さを感じさせる絵本です。だるまちゃんが憧れのてんぐちゃんに近づこうと努力する姿は、子どもだけでなく大人にも響く純粋さがあります。特に印象的なのは、だるまちゃんが身近な素材を使ってやつでの葉っぱで作った「うちわ」やおわんの「ぼうし」を褒められるシーン。創造力と工夫がもたらす喜びや達成感を、子どもたちに自然に伝えています。また、てんぐちゃんがだるまちゃんの努力を受け入れ、心から楽しんでいる姿が友情の素晴らしさを表現しています。かこさとしの描く挿絵は緻密で、何度見ても新たな発見があります。子どもに「友達と一緒に楽しむ喜び」や「自分らしさを大切にすること」を伝えたいときにぴったりの一冊です。

タイトルとURLをコピーしました