
『さんびきのちいさいどうぶつ』は、マーガレット・ワイズ・ブラウンが文を、ガース・ウィリアムズが絵を手がけた絵本です。原作の英語タイトルは『The Little Fur Family』で、1946年にアメリカで出版されました。日本語版は、乾侑美子さんの翻訳によりペンギン社から1978年に刊行されています。物語は森に住む3匹の小さな動物たちが、人間の世界に興味を持ち、順番に出かけていくお話です。最初の1匹が身なりを整えて人間の世界へ行き、帰ってこないため、2番目の動物も服を着て探しに行きます。一番小さな動物は服がないためお留守番をしていましたが、友達たちを心配して探しに出かけます。この物語は、他者との違いや自己の本質について考えさせられる深いテーマを持っています。
略歴
マーガレット・ワイズ・ブラウン
マーガレット・ワイズ・ブラウン(Margaret Wise Brown, 1910-1952)は、アメリカを代表する児童文学作家で、多くの子どもたちに愛される絵本を生み出しました。特に『おやすみなさい おつきさま』(Goodnight Moon)は、彼女の代表作として知られています。ニューヨーク生まれのブラウンは、幼少期から動物や自然への関心を持ち、のちにホリンズ大学で教育を学びました。後、教師として働きながら執筆活動を開始。彼女の作品は、シンプルでリズミカルな言葉遣いと、子どもの感性を捉えた内容が特徴です。若くして急逝しましたが、その作品は今もなお、多くの読者に親しまれています。
ガース・ウィリアムズ(絵)
ガース・モンゴメリー・ウィリアムズ(Garth Montgomery Williams、1912年生まれ)は、アメリカ合衆国の著名なイラストレーターで、児童書や絵本の挿絵で広く知られています。彼はニュージャージー州とカナダの農場で幼少期を過ごし、10歳のときに家族とともにイギリスへ移住しました。ロンドンのウェストミンスター美術学校で建築を学んだ後、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで奨学金を得て美術を専攻しました。第二次世界大戦中は英国赤十字社で活動し、戦後はアメリカに戻り、『ザ・ニューヨーカー』誌でイラストレーターとして活躍しました。E・B・ホワイトの『スチュアートの大ぼうけん』(1945年)や『シャーロットのおくりもの』(1952年)の挿絵を手がけたことで一躍有名になり、ローラ・インガルス・ワイルダーの『大草原の小さな家』シリーズの新版(1953年)でも挿絵を担当しました。晩年はメキシコのグアナフアト州で過ごし、1996年に84歳で逝去しました。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は、3歳から5歳の幼児期の子どもたちに適しています。シンプルなストーリーと優しいイラストが、幼い読者の興味を引き、親子での読み聞かせにも最適です。
レビュー
本作は、一見シンプルな物語の中に、自己探求や帰属意識といった深いテーマが込められています。森の中で暮らす小さな動物たちが人間の世界に憧れを抱き、旅立っていく姿は、未知への好奇心とそれに伴うリスクを象徴しているように感じました。一番小さな動物が、友達を探しに勇気を出して旅立つ姿には、友情の大切さや自己のアイデンティティを守ることの重要性が描かれています。また、ガース・ウィリアムズの柔らかなイラストが物語の世界観を温かく包み込み、読後にはほっとする余韻が残ります。読者によってさまざまな解釈ができる作品であり、大人が読んでも考えさせられる一冊です。親子での読み聞かせにもぴったりで、読み終えた後に感想を語り合うことで、さらに深い理解が得られるでしょう。