ちびうそくん/乾 栄里子

『ちびうそくん』は、乾 栄里子さん作、西村 敏雄さん絵、2014年にPHP研究所から出版された絵本です。ちびうそくんは、元気なかわうそ。でも町に出かけたら、「かわいい」と言われたのは自分ではなくパンダの看板!ちびうそくんは人気者のパンダにあこがれて、「パンダみたいになりたい」と思うようになります。友だちのかものくんが心配になって、ちびうそくんに“かわうその歌”のことを提案。かものくんがちびうそくんを池へ連れていくと、なんと“なまずたち”がちびうその歌を歌ってくれたのです。ちびうそくんとかものくんのあたたかい友情と、「自分らしさ」の大切さを教えてくれる心ほんわかの1冊です。

略歴

乾 栄里子

乾栄里子(いぬいえりこ)さんは1964年東京都生まれで、東京造形大学デザイン科を卒業後、インド・バナスタリ大学でテキスタイルを学んだクリエイターです。『バルバルさん』で絵本作家デビュー。他にも、『ぽんこちゃん ポン!』『パックン バーガーくん』(以上、絵:西村敏雄)、『おわんわん』(絵:100%ORANGE)、『つられたらたべちゃうぞおばけ』など多彩な作品を手がけています。

西村 敏雄(絵)

西村敏雄(にしむらとしお,1964年愛知県生まれ)は、東京造形大学デザイン科卒。家具やテキスタイルのデザイン仕事を経て絵本作家に転身し、第1回日本童画大賞最優秀賞を受賞。代表作に『バルバルさん』『もりのおふろ』『どうぶつサーカスはじまるよ』など多数あり、キャッチーで温かみのある絵が特徴です。『いろいろおふろはいり隊!』でも、野菜キャラたちに豊かな表情とユーモアを与え、読者をぞの世界へ引き込みます。インタビューでは「人の顔や日常のちょっとした表情にヒントを得る」と語っており、親しみのある作風の背景がうかがえます。

おすすめ対象年齢

おすすめ対象年齢は、「ともだちって、いいな」というテーマを軸に、3〜5歳くらいから楽しめる絵本とされています。絵柄も明るく親しみやすく、ちびうそくんの表情や友だちとの関わりがわかりやすく描かれていて、小さめのお子さんへの読み聞かせにも、自分でちょっとずつ読む幼児~低学年児にも向いていると思います。

レビュー

この絵本、ちびうそくんの「人気者になりたい」というちょっと切ないけれど、誰もが共感できる気持ちがとても自然に描かれていて、読みながら子どものころの“ちょっと恥ずかしいけど憧れた気持ち”を思い出しました。ちびうそくんのキメ顔(「かわいい顔」をしてみた!)が愛嬌たっぷり。「かわうその歌」を音楽家のなまずたちが実際に歌ってくれるのも最高。本当に“友情って、ちょっとしたきっかけで励ましになる”というメッセージがしみじみ伝わってきます。最後にちびうそくんがどんな気持ちになるか、というオチも含めて、「人気者でなくても、友だちって本当にいいな」という余韻を残してくれる一冊。子どもにも、大人にも、“自己肯定感+友情の温かさ”を感じさせてくれる素敵な絵本だと思います。