青い鳥/モーリス・メーテルリンク

モーリス・メーテルリンク作の名作童話『青い鳥』を、いもとようこさんが美しい絵とやさしい文で描いた絵本で2007年に発行されました。原作「L’Oiseau Bleu」は1908年にベルギーで発表されました。物語は、貧しい木こりの子供チルチルとミチルが、幸福の象徴である「青い鳥」を探しに幻想的な世界へ旅立つというもの。夢や希望、幸せの本質を問う深いテーマを持ちながら、いもとようこさんの柔らかなイラストと親しみやすい言葉が、小さな子どもにも伝わりやすい仕上がりになっています。鮮やかな色彩と優しい表情の登場人物たちが、物語の魅力を引き立て、親子で読むのにぴったりの一冊です。

略歴

モーリス・メーテルリンク

モーリス・メーテルリンク(Maurice Maeterlinck,1862-1949)は、ベルギー出身の象徴主義を代表する劇作家・詩人です。法学を学ぶも文学に転向し、1889年に『マレーヌ姫』で注目を集めました。幻想的で哲学的な作風が特徴で、代表作に『ペレアスとメリザンド』や児童文学としても有名な『青い鳥』(1908年)があります。1911年にノーベル文学賞を受賞し、生涯を通じて人間の運命や幸福を探求しました。晩年は南フランスで過ごし、1949年にニースで死去。彼の作品は文学のみならず、音楽や美術にも影響を与え、現代でも広く読まれています。

いもとようこ

いもとようこさん(本名:井本蓉子)は、1944年兵庫県生まれの絵本作家・挿絵画家です。金沢美術工芸大学油絵科を卒業後、小学校教員を経て絵本の世界に入りました。独自の貼り絵技法で温かみのある作品を多数手がけ、出版された絵本は400冊以上にのぼります。主な受賞歴として、1985年度『ねこの絵本』、1986年度『そばのはなさいたひ』でボローニャ国際児童図書展エルバ賞を2年連続受賞しています。ちぎった和紙の貼り絵に着色する独自の技法で、柔らかく温かな表情の人物や動物を描き、創作童話や日本の昔話、世界の名作など多くの絵本を手がけ国際的にも高く評価されています。

おすすめ対象年齢

この絵本は、おおよそ3歳から6歳程度の子どもを対象にしています。メーテルリンクの原作は哲学的な要素が強いものの、いもとようこさんの絵本版は、やさしい言葉と親しみやすいイラストで、未就学児でも楽しめる内容になっています。物語の幻想的な世界観を味わいながら、「本当の幸せとは何か?」を考えるきっかけとなるため、小学生低学年の子どもにもおすすめです。親子で読んで話し合うことで、より深い理解につながるでしょう。

レビュー

『青い鳥』は、原作の持つ哲学的なメッセージを、やわらかく優しい絵とシンプルな言葉で表現しているのが魅力です。チルチルとミチルの旅を通じて、読者は「幸せは遠くではなく、身近にある」という大切な教えを自然と受け取ることができます。いもとようこさんの独特な温かみのあるイラストが、幻想的な世界観をより身近に感じさせ、小さな子どもでも親しみやすい仕上がりになっています。読み終えた後、子どもと「幸せってなんだろう?」と話し合いたくなる作品です。また、大人にとっても、自分の日常を見つめ直す良い機会を与えてくれる一冊です。家族で繰り返し読みたい、心に残る名作絵本だと思います。

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