
『すきがいっぱい』は、マーガレット・ワイズ・ブラウンが文を、ガース・ウィリアムズが絵を手掛けた絵本で、1954年にアメリカで発行、日本語版は木坂涼さんの訳で2010年にフレーベル館から出版されました。この絵本は、身の回りの「好きなもの」を次々と挙げていく構成で、日常の中にある小さな喜びや愛おしさを再発見させてくれます。ガース・ウィリアムズの温かみのあるイラストが、ブラウンの詩的な文章と相まって、読者に心地よい読書体験を提供します。
略歴
マーガレット・ワイズ・ブラウン
マーガレット・ワイズ・ブラウン(Margaret Wise Brown, 1910-1952)は、アメリカを代表する児童文学作家で、多くの子どもたちに愛される絵本を生み出しました。特に『おやすみなさい おつきさま』(Goodnight Moon)は、彼女の代表作として知られています。ニューヨーク生まれのブラウンは、幼少期から動物や自然への関心を持ち、のちにホリンズ大学で教育を学びました。後、教師として働きながら執筆活動を開始。彼女の作品は、シンプルでリズミカルな言葉遣いと、子どもの感性を捉えた内容が特徴です。若くして急逝しましたが、その作品は今もなお、多くの読者に親しまれています。
ガース・ウィリアムズ(絵)
ガース・モンゴメリー・ウィリアムズ(Garth Montgomery Williams、1912年生まれ)は、アメリカ合衆国の著名なイラストレーターで、児童書や絵本の挿絵で広く知られています。彼はニュージャージー州とカナダの農場で幼少期を過ごし、10歳のときに家族とともにイギリスへ移住しました。ロンドンのウェストミンスター美術学校で建築を学んだ後、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで奨学金を得て美術を専攻しました。第二次世界大戦中は英国赤十字社で活動し、戦後はアメリカに戻り、『ザ・ニューヨーカー』誌でイラストレーターとして活躍しました。E・B・ホワイトの『スチュアートの大ぼうけん』(1945年)や『シャーロットのおくりもの』(1952年)の挿絵を手がけたことで一躍有名になり、ローラ・インガルス・ワイルダーの『大草原の小さな家』シリーズの新版(1953年)でも挿絵を担当しました。晩年はメキシコのグアナフアト州で過ごし、1996年に84歳で逝去しました。
木坂 涼(訳)
木坂涼(きさか りょう)さんは、1958年、埼玉県生まれ。和光大学人文学部芸術学科を卒業後、博報堂に勤務されました。1981年、自費出版の詩集『じかんはじぶんを』で詩人としてデビューし、その独特な作風が注目を集めました。1987年には詩集『ツッツッと』で第5回現代詩花椿賞を受賞し、1997年には『金色の網』で芸術選奨文部大臣新人賞を受賞されています。詩人としての活動に加え、エッセイスト、絵本作家、翻訳家としても幅広く活躍されています。特に、創作絵本や海外の児童文学の翻訳に力を入れており、代表作には『みんなおっぱいのんでたよ』(福音館書店)や『あいうえたいそう』(偕成社)などがあります。また、翻訳作品としては『ねずみの歯いしゃさんアフリカへいく』や『ヨセフのだいじなコート』など、多数の絵本を手掛けています。現在も、詩や絵本の創作、翻訳を通じて、子どもから大人まで幅広い読者に親しまれる作品を提供し続けています。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は3歳から6歳とされています。シンプルでリズミカルな文章と親しみやすいイラストが、小さな子どもたちの興味を引き、読書への関心を育むのに適しています。
レビュー
『すきがいっぱい』は、子どもたちの日常に潜む「好き」を見つけ出し、その喜びを共有する素晴らしい絵本です。マーガレット・ワイズ・ブラウンの詩的な表現とガース・ウィリアムズの温かいイラストレーションが融合し、読者に心地よい読書体験を提供します。読み聞かせを通じて、親子で「好きなもの」について語り合うきっかけにもなり、子どもの感性や表現力を育む一冊としておすすめです。