おひさまがいっぱい/よだ じゅんいち

『おひさまがいっぱい』(1975年 童心社)は、作:よだ じゅんいちさん、絵:ほりうちせいいちさんによる絵本です。豊かな自然の恵みを謳歌する願いを、自由律詩のあたたかな言葉と、のびやかで明るい絵で表現しています。おひさまの光や自然の息づかいを子どもの目線でとらえ、読む人の心にやさしく響く一冊です。言葉のリズムが心地よく、自然とともに生きる喜びを感じられる作品です。

略歴

よだ じゅんいち

与田凖一(よだ じゅんいち、1905年–1997年)さんは、福岡県出身の児童文学者・詩人です。若くして教職に就いた後、上京して『赤い鳥』などに童話や詩を投稿し、児童文学の道に進みました。自由律詩のリズムを生かした作品が特徴で、自然や子どもの感性を大切にした創作を数多く発表しました。代表作には『わたしとあそんで』や『おひさまがいっぱい』などがあり、日本児童文学者協会の会長も務めました。生涯を通じて、子どもと自然をつなぐ文学を紡ぎ続けた作家です。

ほりうち せいいち(絵)

堀内誠一(ほりうちせいいち,1932年 – 1987年)さんは、東京府向島(現・墨田区)出身のグラフィックデザイナー、エディトリアルデザイナー、絵本作家です。父・堀内治雄も図案家で、堀内は幼少期からデザインに親しみました。14歳で伊勢丹百貨店に入社し、ウィンドウディスプレイやレタリングの仕事を担当。その後、アド・センター株式会社を設立し、雑誌『an・an』『POPEYE』『BRUTUS』『Olive』のロゴデザインを手がけました。また、絵本作家としても活躍し、『ぐるんぱのようちえん』や『たろうのおでかけ』など、多くの作品を残しました。1974年から1981年までフランス・パリ郊外に移住し、現地の文化や芸術にも触れ、パリ在住日本人向けミニコミ誌の創刊に参画しました。1987年に永眠されました。

おすすめ対象年齢

『おひさまがいっぱい』は、3歳頃から小学校低学年におすすめの絵本です。詩のリズムに親しみながら、自然の恵みや太陽のあたたかさを感じられる内容で、読み聞かせにもぴったりです。少し大きくなった子どもなら、自分で読んでことばの響きを楽しむこともできます。

レビュー

この絵本、本当に素晴らしいです!「おひさまがいっぱい」というタイトルなのに、最初は夜のシーンから始まるのが意外で面白いなと思いました。堀内誠一さんの描く、夜の闇から少しずつ光が差し込んでくる絵の美しさは、思わずため息が出るほどです。そして、よだじゅんいちさんの詩が、その絵の世界観をさらに豊かにしています。読むたびに、まるで短いフィルムを見ているような気分になります。静かで心温まる時間が流れていて、忙しい毎日を忘れさせてくれるような、そんな魅力がある絵本でした。