マッチうりの少女/アンデルセン

いもとようこさんが絵と訳を手掛けた『マッチうりの少女』は、アンデルセンの名作を美しいイラストで描いた絵本です。大晦日の雪の夜、貧しい少女がマッチを売り歩きますが、一つも売れません。凍えた少女がマッチを擦ると、暖かな炎やごちそう、クリスマスツリー、そして天国のおばあさんの幻が現れます。翌朝、街の人々は微笑みを浮かべたまま冷たくなった少女を見つけます。この絵本は、2005年に金の星社から日本で発行されました。

略歴

ハンス・クリスチャン・アンデルセン

ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen,1805年 – 1875年)は、デンマークのオーデンセに生まれた童話作家・詩人です。貧しい靴職人の子として生まれ、幼少期から物語に親しみました。俳優を志してコペンハーゲンへ移るも挫折し、その後作家としての道を歩み始めます。30歳の時、イタリア旅行の体験を綴った『即興詩人』を出版し、作家として認められました。その後、『おやゆびひめ』、『人魚姫』、『マッチ売りの少女』、『みにくいあひるの子』、『はだかの王さま』など、150編以上の童話を発表し、世界中で愛されています。

いもとようこ

いもとようこさん(本名:井本蓉子)は、1944年兵庫県生まれの絵本作家・挿絵画家です。金沢美術工芸大学油絵科を卒業後、小学校教員を経て絵本の世界に入りました。独自の貼り絵技法で温かみのある作品を多数手がけ、出版された絵本は400冊以上にのぼります。主な受賞歴として、1985年度『ねこの絵本』、1986年度『そばのはなさいたひ』でボローニャ国際児童図書展エルバ賞を2年連続受賞しています。ちぎった和紙の貼り絵に着色する独自の技法で、柔らかく温かな表情の人物や動物を描き、創作童話や日本の昔話、世界の名作など多くの絵本を手がけ国際的にも高く評価されています。

おすすめ対象年齢

この絵本は、幼児から大人まで幅広い年齢層を対象としています。特に3歳から5歳の子どもたちが親しみやすい内容ですが、大人にとっても深い感動を与える物語です。親子で一緒に読みながら、命の大切さや思いやりの心について話し合う機会を提供してくれます。また、読み聞かせだけでなく、自分で読む子どもたちにとっても、物語の世界に深く入り込むことができる一冊です。いもとようこさんの温かみあるイラストが、より豊かな読書体験をもたらします。

レビュー

いもとようこさんの『マッチうりの少女』は、アンデルセンの名作に新たな命を吹き込んだ素晴らしい絵本です。物語自体は悲しく切ない内容ですが、いもとさんの優しく温かいイラストが加わることで、物語に希望や安らぎが感じられます。特に、マッチの火に映し出される幻想的な光景は、読者の心を強く揺さぶります。親子で読み聞かせをする中で、命の尊さや家族の愛について自然と考えるきっかけを与えてくれる点も、この絵本の魅力です。また、大人が読み返しても、子どもの頃には気づけなかった深いテーマを見つけることができ、心に残る一冊だと思います。いもとようこさんの柔らかなタッチのイラストとアンデルセンの物語が見事に調和し、すべての世代にとって感動的な読書体験を提供してくれる作品です。

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