いのちの木/ブリッタ・テッケントラップ

『いのちの木』は、ドイツ出身の作家ブリッタ・テッケントラップによる絵本。原題は『The Memory Tree』で、2013年にイギリスで初版が発行されました(Little Tiger Press刊)。日本語版は森山京さんのやさしい訳で届けられています。年老いたキツネが静かに旅立ち、それを見送る動物たちがキツネとの思い出を語り合うことで、心の中に“いのちの木”が芽吹いていくというお話。生と死、別れと記憶、再生の希望を美しいイラストと静かな語り口で描いています。

略歴

ブリッタ・テッケントラップ

ブリッタ・テッケントラップ(Britta Teckentrup)は1970年、ドイツ・ハンブルク生まれの絵本作家・イラストレーター。ロンドンのセント・マーチンズ美術大学で学び、その後約20年間イギリスを拠点に活動。現在はベルリン在住。絵本や児童書、ポスター、広告など多彩な分野で作品を手がけ、世界中で翻訳出版されています。作品は詩的で哲学的なテーマを持ちつつも、やさしい色使いと印象的なグラフィックで子どもたちに親しまれています。代表作には『ツリーハウス』『Moon』『いのちの木』などがあります。

森山 京(訳)

森山 京(もりやま みやこ、1929年 – 2022年)さんは、日本の児童文学作家・翻訳家。京都府出身。短大卒業後、図書館勤務などを経て、40代で児童文学作家としてデビュー。代表作に『つりばしゆらゆら』『きいろいばけつ』など「きつねのこ」シリーズがあり、繊細な感情表現とやさしい語り口が子どもから大人まで幅広く支持されています。翻訳も多数手がけ、海外作品に命を吹き込む名訳で知られています。2007年、産経児童出版文化賞などを受賞。

おすすめ対象年齢

この絵本は、5歳くらいから小学校中学年くらいまでがおすすめ。ですが、大人が読んでも心に響く深いテーマが描かれているので、親子で一緒に読むのにもぴったりです。死やお別れという難しいテーマを、やさしく丁寧に伝えてくれる1冊です。

レビュー

この絵本を読んで、静かな感動がじわじわと胸に広がりました。キツネを見送る動物たちの姿がとても愛おしく、思い出が語られるたびに“いのちの木”が成長していく様子が心に残ります。死を悲しみだけでなく、残された者の中に生き続ける存在として描いているのが印象的でした。大切な誰かを失ったとき、こんなふうに思いを語り合いながら心が癒えていくんだなと、そっと教えてくれる絵本です。色づかいもとても美しく、しんとした静けさと温かさが同居する作品です。