『ポインセチアはまほうの花』は、作:ジョアンヌ・オッペンハイム、絵:ファビアン・ネグリン、訳:宇野和美さんによる絵本で、日本語版は2010年に光村教育図書から出版されました。原題は The Miracle of the First Poinsettia: A Mexican Christmas Story、初版は2003年に米国発行(Barefoot Books社)、メキシコのクリスマス伝統、特に子どもたちの歌声とピニャータ、そしてポインセチアの“奇跡”を軸にした、お話になっています。ジョアンヌ・オッペンハイムさんはアメリカを拠点に、児童書多数の作家で、伝統や文化をやさしく紹介する語りが特徴。この本では、メキシコの「ポサダ」や「夜のクリスマス(La Noche Buena)」の風習、そして“プレゼントがない少女の持っていた雑草が、心からの贈り物として赤いポインセチアへと奇跡的に変わる”という伝説的な物語が、豊かな色彩のイラストと共に語られています。
略歴
ジョアンヌ・オッペンハイム
ジョアンヌ・オッペンハイム(Joanne F. Oppenheim)は、子ども向けの本を数多く手がけるアメリカの作家で、50冊以上の児童書・絵本を著し、IRA(国際読書協会)のビッグブック賞など評価も高いです。代表作には、『ポインセチアはまほうの花』の他、『Have You Seen Birds?』『Have You Seen Bugs?』、『You Can’t Catch Me!』など、自然、動物、文化的な物語をユーモアや心あたたまるタッチで描く作品が多くあります。
アナ・センデル(絵)
ファビアン・ネグリン(Fabian Negrin)は、メキシコシティで美術を学び、絵本のイラストレーターとして活躍しているアーティストです。その絵柄は、メキシコの壁画芸術からの影響を感じさせる鮮やかな色彩と、少し夢幻的で装飾的な背景が特徴的。『ポインセチアはまほうの花』のほか、『The Secret Footprints』などでも、その豊かなビジュアル表現が高く評価されています。
宇野 和美(訳)
宇野和美さんは大阪出身、東京外国語大学スペイン語学科卒、スペイン・バルセロナ自治大学大学院修了という経歴を持つスペイン語圏文学・児童書翻訳の第一人者です。1995年『アドリア海の奇跡』で翻訳家デビュー。以後、児童書・絵本やYAを中心に、スペイン語圏の優れた作品を多く邦訳されてきました。また、スペイン語圏の児童書を専門とするネット書店「ミランフ洋書店」の運営者でもあり、スペイン語絵本を日本の読者に伝える活動を幅広く行われています。
おすすめ対象年齢
この絵本は、幼児〜小学校低学年くらいを主な対象にしつつ、メキシコの文化やクリスマスの伝統を軽く紹介しており、家族で読み合うのにもぴったりな内容です。クリスマスの“奇跡”“心からの贈り物”というテーマは、子どもにも理解しやすく、また文化背景を知るきっかけにもなるので、小学校中・高学年や大人にも味わい深く読める一冊だと思います。
レビュー
この絵本、とても温かくて、少し“異国のクリスマス”を感じさせつつ、「贈り物とは何か」「心からの気持ちとは何か」「文化や伝説が人の心を豊かにする意味」といった普遍的なテーマも含んでいるところが素敵です。ジョアンヌ・オッペンハイムさんの語り口はやさしく、物語のテンポがほどよく、読み聞かせにも向いています。そして、ファビアン・ネグリンさんのイラストがまた魅力的で、メキシコの民俗的な装飾や、祭りの色彩、夜の教会や街角の雰囲気が絵の中から感じられて、「この場面、まるで映画を観ているようだな」と思いました。「贈り物がないから、雑草を持って教会に行く」という主人公の切実さが、奇跡によって“美しいポインセチア”になるという展開は、ただのファンタジー以上に、「持っているもので、どこまで心を尽くせるか」「与えるとはどういうことか」を静かに問いかけてくれて、読み終わった後に“自分ならどう思うだろう”と考えさせられます。クリスマス前の季節に読むのにもいいし、文化や伝説を通して“心の豊かさ”を語る絵本としても、いろいろな場面で紹介できるなと思いました。


