『ルピナスさん―小さなおばあさんのお話』は、バーバラ・クーニー作、掛川恭子訳の絵本で、原題は『Miss Rumphius』、1982年にアメリカで発行されました。日本語版は1987年に刊行されています。物語は、幼い頃に祖父と交わした「世の中をもっと美しくする」という約束を胸に、世界を旅し、最終的にルピナスの花を咲かせて町を彩る女性、ミス・ランフィアスの生涯を描いています。彼女の行動は、日常の中で美しさを創造することの大切さを教えてくれます。
略歴
ヘウォン・ユン
バーバラ・クーニー(Barbara Cooney、1917年 – 2000年)は、アメリカ合衆国の著名な児童文学作家・イラストレーターです。ニューヨーク州ブルックリンで生まれ、幼少期から美術と文学に親しみました。スミス大学で美術を専攻し、第二次世界大戦中には女性航空兵としての訓練を受けたこともあります。クーニーは、版画の技法や水彩画など多様な技術を用いた美しいイラストで知られ、40冊以上の絵本を手がけました。1959年に『Chanticleer and the Fox』で初めてコールデコット賞を受賞し、1980年には『Ox-Cart Man』で再び同賞を受賞しました。1983年には『Miss Rumphius』(邦題『ルピナスさん』)が全米図書賞を受賞するなど、数々の賞に輝いています。その作風は深い感情や哲学的なテーマを含み、子どもだけでなく大人にも愛されています。
掛川 恭子(訳)
掛川恭子(1936年生まれ)さんは、日本の優れた翻訳家であり、東京府(現・東京都)出身です。津田塾大学英文学科を卒業後、カナダのアルバータ大学に留学し、英米文学と翻訳のスキルを磨きました。掛川は、キャサリン・M・ペイトンの『フランバーズ屋敷の人びと』や『赤毛のアン』シリーズ全10巻の完訳など、児童文学の名作を多く日本語に翻訳しました。その翻訳スタイルは、原作の雰囲気を繊細に再現しながら、日本語としての美しさも兼ね備えています。掛川の作品は、特に子どもたちが文学の世界に親しむための入口として評価が高く、翻訳文学における重要な位置を占めています。『ルピナスさん』では、バーバラ・クーニーの詩的な文体を見事に日本語に表現し、多くの読者に感動を届けています。また、翻訳以外にも、児童文学に関する講演活動や執筆活動を通じて、その魅力を広める役割も果たしてきました。
おすすめ対象年齢
『ルピナスさん』は、一般的に4歳から小学校低学年の子どもたちに適した絵本とされています。しかし、その深いテーマや美しいイラストレーションは、大人にも感動を与える作品です。親子で一緒に読み、世代を超えて楽しむことができる絵本として、多くの人々に愛されています。
レビュー
『ルピナスさん』は、人生の目的や美しさを追求することの意義を静かに語りかけてくる作品です。主人公のミス・ランフィアスが祖父との約束を果たすために世界を旅し、最終的にルピナスの花で町を彩る姿は、自己実現と社会貢献の両立を象徴しています。バーバラ・クーニーの繊細で美しいイラストレーションは、物語の深みをさらに引き立てています。また、掛川恭子の丁寧な翻訳により、日本の読者にもその魅力が余すところなく伝わっています。読むたびに新たな発見があり、心に深い余韻を残す絵本です。