モモ(絵本版)/ミヒャエル・エンデ

ミヒャエル・エンデの名作刊行50周年を記念して企画された絵本版。
名作『モモ』の絵本版は、原作『Momo』をもとに、1973年にドイツで発表された物語をかなり簡潔にまとめ、ビジュアルで楽しめる形式に再構成した作品です。町のはずれ、こわれかけた野外劇場に住んでいるという女の子。最初はあやしいと思われていたものの、たくさんの人たちがモモに会いにきました。それはモモが人の話を聞くことが得意だったからです。モモに話を聞いてもらうと、自分のしたいことがはっきりとわかったり、間違いに気づいたりします。美しいイラストが、エンデの深い哲学的テーマを子どもから大人まで楽しめる形で伝えてくれます。

略歴

ミヒャエル・エンデ

ミヒャエル・エンデ(Michael Andreas Helmuth Ende)は1929年、ドイツのバイエルン州ガルミッシュ=パルテンキルヒェンで生まれました。父は画家エドガー・エンデ。第二次世界大戦中、ナチスにより父の作品が「退廃芸術」とされ、家族は苦しい生活を送りました。
青年期にはミュンヘン演劇学校で学び、劇作家や舞台俳優を目指すも、後に執筆活動に専念。児童文学『ジム・ボタンの冒険』で作家デビューを果たし、1960年にはこの作品でドイツ児童文学賞を受賞。その後も多数の作品を発表し、特に1973年の『モモ』、1979年の『はてしない物語(Die unendliche Geschichte)』が国際的に大ヒット。これらは深い哲学的テーマを含むファンタジーとして、多くの読者に影響を与えました。
エンデの作品は40以上の言語に翻訳され、世界的な作家としての地位を確立。1995年、シュトゥットガルト近郊のフルッティンゲンで胃癌のため逝去。エンデの作品は、子どもから大人まで楽しめる奥深い物語として、今もなお愛されています。

シモーナ・チェッカレッリ(絵)

シモーナ・チェッカレッリ(Simona Ceccarelli)はイタリア出身のイラストレーターで、現在はスイス在住。幼少期から芸術と科学に興味を持ち、サンフランシスコのアカデミー・オブ・アート大学でビジュアルスタイルやデザインを構築するプロセスを学びました。その後、科学研究者としてのキャリアから児童書のイラストレーターへと転身。彼女の作品はキャラクターデザインや物語性の高い描写が特徴で、子どもたちに喜びを届けることを目指しています。
シモーナは数々の児童書を手がけており、代表作には『If You Had Your Birthday Party on the Moon』や『This Book is Upside Down』などがあります。また、科学や教育をテーマにした作品にも定評があり、親子で楽しめる内容を提供しています。2023年にはミヒャエル・エンデの名作『モモ』の絵本版でイラストを担当。原作の魅力を引き立てる幻想的で繊細なイラストが高く評価されています。
多文化的なバックグラウンドを活かし、スイスで活動を続ける彼女は、3つの国籍、4つの言語を操るグローバルな視点を持つアーティストでもあります。

松永 美穂(訳)

松永美穂(まつなが みほ)氏は、1958年愛知県生まれのドイツ文学者・翻訳家で、早稲田大学文学学術院教授を務めています。1982年に東京大学文学部ドイツ文学科を卒業後、同大学大学院修士課程を修了。その後、ドイツ学術交流会奨学生としてハンブルク大学に留学しました。帰国後は、フェリス女学院大学国際交流学部専任講師、助教授を経て、1998年より早稲田大学で教鞭を執っています。
翻訳家としては、ベルンハルト・シュリンクの『朗読者』をはじめ、多くのドイツ文学作品を日本に紹介しています。また、絵本の翻訳にも力を入れており、『モモ』の絵本版の日本語訳も手がけています。
教育者としては、「翻訳・批評ゼミ」を担当し、学生たちに翻訳の楽しさや難しさを伝えています。

おすすめ対象年齢

『モモ(絵本版)』の対象年齢は、一般的に小学校中学年から大人まで楽しめる内容になっています。物語の内容は原作を簡潔に再構成したものです。豊かなイラストと簡潔な文章で、物語を初めて知る子どもも楽しめます。一方、原作の哲学的テーマや深いメッセージ性に触れる入り口として、大人も含め幅広い年齢層が楽しめる内容です。

レビュー

『モモ(絵本版)』は、原作の哲学的な深みを残しつつ、子どもから大人まで楽しめる形にした作品です。まず、何と言っても美しいイラストが印象的。絵本版では、原作の詳細なストーリーが簡潔すぎるぐらいにまとめられているため、小さな子供にも理解しやすい構成となっています。
特に、モモの聞く力は、子どもたちだけでなく、大人にとっても欲しい能力です。日常生活の中で人間関係の大切さを改めて考えさせられました。
原作をすでに読まれた方は「50周年を記念して企画された絵本版」ですので。。。
別物だと思って読んでもらったほうがいいとおもいます。

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