サトシンさん文、中谷靖彦さん絵の『おさるのパティシエ』(2012年 小学館)は、情熱いっぱいのケーキ職人“おさるくん”が主人公のお話です。ケーキ屋のオーナーに頼まれ、新しい看板メニューを考えることになったおさるくん。使命感に燃えて試行錯誤をくり返し、失敗しては反省し、でもすぐに立ち直ってまた挑戦します。その姿は一生懸命でちょっとドジだけど、応援したくなる愛らしさにあふれています。最後に完成する渾身の傑作ケーキは、読んでいてワクワク!読み聞かせはもちろん、親子でケーキ作りの過程を楽しめる仕掛けもたっぷりの、にぎやかで明るい一冊です。
略歴
サトシン
サトシン(本名:佐藤伸/さとう しん)さんは1962年、新潟県生まれの絵本作家です。もともとは広告制作プロダクションに勤め、専業主夫を経て、フリーランスのコピーライターとして在宅で働きつつ、やがて絵本作家の道へ進みました。「お話の力の復権」を目指し、親子のコミュニケーション遊びとして「おてて絵本」を考案、ソング絵本の普及活動も精力的に行っています。代表作には、爆笑必至で子どもにも大人にも人気の『うんこ!』(絵:西村敏雄/文溪堂)、『わたしは あかねこ』(絵:西村敏雄/文溪堂)、そして『とこやにいったライオン』(絵:おくはらゆめ/教育画劇)や『でんせつの きょだいあんまんを はこべ』(絵:よしながこうたく/講談社)など、多彩なテーマとユーモアを交えた絵本を多数手がけています。「おてて絵本」のアイデアや全国での絵本ライブ活動など、絵本を読むだけでなく“場づくり”としての絵本文化を広げている点も、サトシンさんならではの魅力だと思います。
中谷 靖彦(絵)
中谷靖彦(なかや やすひこ)さんは1968年富山県生まれ。大学卒業後に一度就職(富山地方鉄道)を経て桑沢デザイン研究所で学び、その後オランダ(ユトレヒト等)でイラストを学ばれました。帰国後フリーのイラストレーター/絵本作家として活動を開始し、第25回講談社絵本新人賞を受賞、絵本『ミーちゃんですョ!』でデビュー。代表作に『ビッグパーン!』『おくのほそ道』のほか、サトシン作品の絵(『おさるのパティシエ』など)も手がける、ユーモアと温かみのある画風で親子に人気の作家です。
おすすめ対象年齢
対象年齢は4歳から小学校低学年くらいまでがおすすめです。リズミカルな文章とコミカルなおさるくんの行動は小さな子にもわかりやすく、読み聞かせで盛り上がります。小学生になると「どうやったら新しいケーキができるんだろう?」と想像を広げたり、創作意欲を刺激されたりと、幅広い楽しみ方ができます。
レビュー
おさるくんの一生懸命さとドタバタぶりに、読んでいてとても親近感がわきました。失敗して落ち込んでもすぐに立ち直り、また挑戦する姿は子どもたちにとって勇気をくれると思います。ケーキ作りのシーンはテンポよく描かれていて、声に出して読むとさらに楽しめました。中谷靖彦さんのイラストは温かみがあり、おさるくんの表情も豊かで、親子で笑顔になれる一冊です。最後に完成するケーキは予想以上にユニークで、読んだ後に「自分ならどんなケーキを作る?」と会話が弾むのも魅力でした。

