『もうじきたべられるぼく』は、はせがわゆうじさんによる絵本で、2022年に中央公論新社から出版されました。この絵本は、屠畜される運命にある一頭の子牛の視点から、命の尊さや食についての深いテーマを描いており、読者に強い感動をもたらす作品です。特に、幼児期から小学生、そして大人にまで幅広い層に影響を与える内容で、親子で命について話し合うきっかけとしても活用されています。
はせがわゆうじの略歴
はせがわゆうじさんは1958年に名古屋で生まれ、名古屋芸術大学を卒業後、デザイン事務所で働きながらイラストレーターとしての道を歩み始めました。1986年にサンリオの「詩とメルヘン」イラストコンクールで優秀作品賞を受賞し、そその後、絵本作家としての道を歩み始めました。彼の作風は柔らかい色鉛筆やペン画で、独特のユーモアと温かみのある動物や人物キャラクターが特徴的です。
はせがわさんは絵本「じてんしゃ倶楽部」「ゆうやけ探検隊」「ベンジャミンの空」など多くの作品を手がけ、近年では「もうじきたべられるぼく」が第7回未来屋えほん大賞を受賞するなど、日本の絵本界で注目されています。
おすすめ対象年齢
『もうじきたべられるぼく』のおすすめ対象年齢は5歳以上が推奨されています。この作品は、短い話ながらも深いメッセージが込められており、幼い子どもから大人まで幅広い層に親しまれています。絵本を通じて命の大切さや、感謝の気持ちを伝える内容は、教育的な意義も持つと評価されており、食育や生命教育の一環としても活用されています。ただし、感情移入を誘うストーリーと切ないラストシーンが含まれているため、読む人によっては強い印象を受けることもあります。そのため、親や大人と一緒に読み、作品について一緒に話す時間を持つと、子どもにとってより理解しやすく心に残る体験となるでしょう。
レビュー
『もうじきたべられるぼく』は、読み終えた後に心に静かで深い余韻が残る作品だと感じます。この絵本は、物語がシンプルでありながらも、読む人に命についての根源的な問いを投げかけ、食べること、食べられることへの新しい視点を提供してくれます。特に、「命のつながり」をテーマにしながらも、説教臭くならず、読者自身が感じることを促す静かな語り口が印象的です。絵本を読み終えた後に、自分が食べるものや日常の「いただきます」に対して、より深い思いを持つようになりました。はせがわさんがラストの言葉に込めたメッセージは、命を「いただく」という日常的な行為をもう一度考え直すきっかけを与えてくれ、特に子どもと一緒にこの本を読むと、親子で自然と命や感謝について話し合う機会が生まれそうです。