よるのとこやさん/垣内 磯子

『よるのとこやさん』(作:垣内磯子/絵:村田エミコ、2009年 フレーベル館)は、夜の街にひっそりと開く床屋「バーバームーン」が舞台のお話です。店主のキールさんを訪れるのは、人間だけでなく動物やちょっと不思議な生き物たち。夜ならではのお客さんが次々と現れ、ユーモラスで温かいやりとりが描かれます。リズミカルな文と細やかな描写が、夜の街のにぎわいとやさしい雰囲気を感じさせ、子どもも大人も楽しめる一冊です。

略歴

垣内 磯子

垣内磯子(かきうち いそこ)氏は、東京都出身で、早稲田大学文学部仏文科を卒業された詩人、絵本・童話作家、翻訳家です。詩人としてデビューし、早稲田大学在学中には小野梓記念賞を受賞、またサンリオ詩とメルヘン賞なども受賞されています。詩集『春の通信簿』や『かなしいときには』、絵本『よるのとこやさん』など、多数の作品を手掛けています。近年では、フランスの作家オーレリー・シアン・ショウ・シーヌによる「ガストン」シリーズの翻訳を担当し、子どもたちの感情コントロールを助ける絵本として好評を博しています。翻訳に際しては、原作のニュアンスを大切にしつつ、子どもたちが楽しく読めるよう工夫を凝らしており、作品を通じて子どもたちに生きるノウハウが自然と伝わることを願っているそうです。

村田 エミコ(絵)

村田エミコさんは1969年、東京都生まれの木版画家・絵本作家です。1993年頃から木版画制作を始め、以来毎年または数回の個展を開催し、絵本原画やオリジナル版画などを発表し続けています。絵本作品には『つぎ、とまります』(福音館書店)、『そばやのまねきねこ』(岩崎書店)、『おふろおばけ』(大日本図書)、『よるのとこやさん』(フレーベル館)など多数があります。その画風は温かみのある柔らかな色彩と版画らしい版の重なりが特徴で、子どもの想像力を刺激する、親しみやすくも懐かしい世界を描き出しています。

おすすめ対象年齢

『よるのとこやさん』の対象年齢は、主に 4歳から小学校低学年ごろ におすすめです。夜のお店という少し特別な舞台設定と、不思議で楽しいお客さんたちの登場が、子どもの想像力を大きく広げます。文字数も適度で読み聞かせにちょうどよく、自分で読む年齢になってからも繰り返し楽しめる内容です。

レビュー

夜の街に開く「バーバームーン」という設定がとてもユニークで、読んでいるとワクワクしました。お客さんが人間だけでなく、動物やちょっと変わった存在であるのが楽しく、子どもの発想にぴったり寄り添っています。村田エミコさんの絵は、夜のしっとりした雰囲気をやさしく描きながらも、登場人物たちの表情を生き生きと伝えてくれるので、見ているだけでも物語の世界に入り込めます。眠る前の読み聞かせにも合いそうで、子どもに「夜ってこんなに楽しいんだ」と思わせてくれる魅力がある一冊でした。