ちいさなうさこちゃん/ディック・ブルーナ

『ちいさなうさこちゃん』は、オランダの絵本作家ディック・ブルーナが生んだ人気キャラクター“ミッフィー”のはじまりの一冊。原作名は『nijntje』で、オランダでは1955年に刊行され、日本語版は1964年に出版されました。小さなうさぎの女の子・うさこちゃんが生まれ、家族に愛されながら成長していくシンプルな物語。はっきりした色と形で描かれたイラストと、やさしい語り口のリズムが魅力です。読み聞かせにもぴったりの名作です。

略歴

ディック・ブルーナ

ディック・ブルーナ(Dick Bruna、1927年〜2017年)は、オランダ・ユトレヒト生まれの絵本作家・グラフィックデザイナー。父の出版社でデザインの仕事をするかたわら、1953年ごろから絵本制作を開始。代表作は「うさこちゃん」シリーズで、世界的に知られるキャラクター「ミッフィー(nijntje)」を誕生させました。ミニマルな線と明快な色づかいで、子どもから大人まで長く愛されています。著作は50か国以上で翻訳され、総発行部数は8500万部以上にのぼります。

石井桃子(訳)

石井桃子(いしいももこ、1907 – 2008)さんは、日本の児童文学作家・翻訳家で、子どもたちに優れた海外文学を紹介することに尽力しました。東京大学文学部を卒業後、出版社で働きながら翻訳を始め、やがて児童文学の世界で活躍するようになります。彼女は翻訳の名手として知られ、アメリカやヨーロッパの名作を日本語に翻訳し、多くの子どもたちに親しまれる作品を生み出しました。特に『クマのプーさん』や「ピーターラビット」シリーズの翻訳で高い評価を得ています。また、児童書編集者としても活動し、日本初の絵本専門出版社「岩波書店の岩波こどもの本」シリーズの立ち上げに携わり、質の高い絵本の普及に貢献しました。晩年には、自らの創作活動にも力を入れ、『ノンちゃん雲に乗る』などの作品で知られています。彼女の翻訳は、原作の魅力を忠実に伝えるだけでなく、日本語の美しさを引き出し、親しみやすい表現を用いる点で評価されています。彼女の活動は、日本における児童文学の発展に大きく寄与し、現在も多くの読者に影響を与え続けています。彼女の業績は、日本と世界の子どもたちを繋ぐ架け橋として輝き続けています。

おすすめ対象年齢

『ちいさなうさこちゃん』の対象年齢は、おおよそ0歳〜3歳ごろ。はっきりしたイラストと短い文章で構成されているため、赤ちゃんのファーストブックとしても最適です。繰り返しのリズムや色使いが視覚と聴覚の発達をうながし、親子の読み聞かせにもぴったり。絵本デビューにおすすめの一冊です。

レビュー

初めて読んだときの「このシンプルさ、すごい!」という驚きは今でも覚えています。白いうさぎのうさこちゃんが生まれて、家族に愛されて育つ——それだけの物語なのに、なぜか心があたたかくなるんです。線の太さ、色のコントラスト、リズムのいい言葉づかい。どれも赤ちゃんにぴったりなのに、大人が読んでも癒される。うさこちゃんの表情がほとんど変わらないのに、感情がちゃんと伝わってくるのもすごい。長く読み継がれる理由がわかります。