ディック・ブルーナ作『うさこちゃんまほうをつかう』(原題:Nijntje de toverfee,オランダ語,2007年)は「もしわたしが魔法使いだったら?」と うさこちゃんが想像をふくらませる、とっても楽しい世界が描かれています。おうちがキラキラのお城になったり、困っているカエルや小鳥に魔法をかけて助けたりと、夢いっぱいの出来事が次々に展開。ブルーナらしい太い線と原色の色づかいで、魔法のワクワク感がビシビシ伝わってきます。日本語版は福音館書店から2011年に刊行され、訳は まつおかきょうこさんです。
略歴
ディック・ブルーナ
ディック・ブルーナ(Dick Bruna、1927年〜2017年)は、オランダ・ユトレヒト生まれの絵本作家・グラフィックデザイナー。父の出版社でデザインの仕事をするかたわら、1953年ごろから絵本制作を開始。代表作は「うさこちゃん」シリーズで、世界的に知られるキャラクター「ミッフィー(nijntje)」を誕生させました。ミニマルな線と明快な色づかいで、子どもから大人まで長く愛されています。著作は50か国以上で翻訳され、総発行部数は8500万部以上にのぼります。
松岡 享子(訳)
松岡享子(まつおかきょうこ,1935-2022)さんは、日本の児童文学研究者、翻訳家、図書館司書です。神戸女学院大学を卒業後、ウェスタン・ミシガン大学で修士号を取得されました。帰国後は、福音館書店に勤務し、東京都立日比谷図書館で児童サービスにも携わられました。1974年には「東京子ども図書館」を設立し、児童書の普及に尽力されました。代表作に『とこちゃんはどこ』『おふろだいすき』、また、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や「くまのパディントン」などの翻訳も手掛けられました。著作・翻訳は200冊以上にのぼり、文化功労者としても顕彰され、児童文学の発展に大きく貢献されました。
おすすめ対象年齢
公式では「読んであげるなら3歳から」、自分で読むなら小学校低学年向けとされています。空想遊びやごっこ遊びが大好きな時期にぴったりで、「もし魔法が使えたら…?」という発想を思い切り楽しめる一冊。文章は短くてリズムもあるから、2歳からの読み聞かせにも良さそうです。
レビュー
うさこちゃんが「もし魔法を使えたら」という気持ちで繰り広げる想像の世界が、とにかくかわいくて楽しい!お城に変身したおうち、カエルに王冠、小鳥にカラフルな羽…ひとつひとつの魔法が、まるで子どもの夢そのもの。特に「ほーくす、ぽーくす、ぱーす!」の呪文はリズミカルで、読みながら思わず手拍子したくなります。まつおかきょうこさんの訳も自然で耳ざわりがよく、リズムに乗って読める。最後には「魔法よりも、うさこちゃんの思いやりって素敵!」と心があたたかくなる、そんな素敵な余韻もあります。読み終えたあと、子どもと一緒に「次はどんな魔法?」って話したくなる、親子で楽しめる絵本です。