
『ハリーのセーター』は、ジーン・ジオン作、マーガレット・ブロイ・グレアム絵、わたなべしげお訳の絵本です。原作名は『No Roses for Harry!』で、1958年にアメリカで発行され、日本語版は1983年に福音館書店より出版されました。主人公は白い毛に黒ぶちの犬・ハリー。誕生日におばあちゃんからもらったバラ模様のセーターが気に入らず、どうにかして手放そうと試みます。しかし、親切な人々によって毎回戻されてしまいます。ある日、セーターの毛糸がほつれ、それを鳥が持ち去り、巣として活用するというユーモラスな展開に。最後には新しいセーターを手に入れ、物語は心温まる結末を迎えます。
略歴
ジーン・ジオン
ジーン・ジオン(Gene Zion、1913年 – 1975年)はアメリカの児童文学作家で、特に絵本「どろんこハリー」シリーズシリーズで広く知られています。ニューヨークで生まれ育ち、デザインと美術のバックグラウンドを持っていた彼は、戦時中はアメリカ陸軍に従軍し、その後はデザイン会社で働くようになりました。絵本作家としてのキャリアを本格的にスタートさせたのは、妻のマーガレット・ブロイ・グレアムと協力した作品がきっかけです。ジーン・ジオンは、動物や子供たちの視点からユーモラスに日常生活を描くことに長けており、独特の温かさと親しみやすさが作品全体にあふれています。彼が手掛けた絵本の多くは、マーガレット・ブロイ・グレアムが挿絵を担当し、特に「どろんこハリー」シリーズは大きな成功を収めました。この作品は世界中で翻訳され、数世代にわたって愛されています。彼の作品は、シンプルな文体と温かみのある物語で、子供たちに「家族」「冒険」「発見」といった普遍的なテーマをわかりやすく伝えています。
マーガレット・ブロイ・グレアム(絵)
マーガレット・ブロイ・グレアム(Margaret Bloy Graham、1920年生まれ)は、カナダ出身の絵本作家・イラストレーターです。トロント大学で美術を学び、卒業後はニューヨークに移住しました。1956年、ジーン・ジオン(Gene Zion)と共に制作した『どろんこハリー(Harry the Dirty Dog)』で広く知られるようになりました。この作品は、汚れることが大好きな犬ハリーの冒険を描いており、子供たちに愛されています。グレアムは、ジオンとのコラボレーションで多くの作品を手掛け、彼女自身も作家として活動しました。彼女のイラストは、シンプルでありながら感情豊かで、物語に命を吹き込むと評価されています。
わたなべしげお(訳)
渡辺茂男(わたなべしげお,1928年 – 2006年)さんは、日本の児童文学者、翻訳家です。静岡県静岡市葵区生まれ。静岡県立静岡商業学校、久我山工業専門学校を経て、慶應義塾大学文学部図書館学科を卒業後、米国のウェスタン・リザーブ大学大学院を修了しました。ニューヨーク公共図書館児童部勤務を経て、1975年まで慶應義塾大学文学部図書館学科教授を務めました。石井桃子さんを中心とする「ISUMI会」に携わったことがきっかけで、児童文学に関わるようになりました。日本国際児童図書評議会(JBBY)創立に尽力し、『寺町三丁目十一番地』で1969年に厚生大臣賞、1970年にサンケイ児童出版文化賞を受賞しました。
おすすめ対象年齢
『ハリーのセーター』の対象年齢は、4歳から小学低学年くらいが目安とされています。ハリーの素直でユーモラスな行動は、小さな子どもたちにとって共感しやすく、ストーリーの展開も分かりやすいため、幼児から楽しめます。ハリーの表情豊かなイラストが物語の面白さを引き立て、読み聞かせにもぴったりな作品です。
レビュー
『ハリーのセーター』は、ハリーの純粋で正直な気持ちが描かれており、子どもたちが共感しやすい内容となっています。 自分の好みや感情に素直なハリーの姿は、子どもたち自身の姿を映し出しているようです。 また、セーターを捨てようとするハリーの奮闘や、最終的にセーターが鳥の巣として新たな役割を果たす展開は、ユーモラスで心温まるものです。 絵本全体を通して、ハリーの表情や行動が細やかに描かれており、読み手を引き込む魅力があります。 子どもたちにとって、自分の気持ちを大切にしつつ、周囲との関わりや思いやりの大切さを感じ取れる作品です。