いつも だれかが…/ユッタ・バウアー

ユッタ・バウアーの絵本『いつも だれかが…』は、原題『Opas Engel』として2001年にドイツで発行されました。この作品は、病床のおじいさんが孫に自身の人生を語る物語です。おじいさんは、幼少期から多くの危険や困難を経験しながらも、常に「誰か」に守られてきたと感じています。その「誰か」とは、絵本の中で描かれる天使の姿であり、読者はその存在に気づくことができます。この絵本は、目に見えない存在の温かさや、人々の支え合いの大切さを静かに伝える作品として、多くの読者の心を打っています。

略歴

ユッタ・バウアー

ユッタ・バウアー(Jutta Bauer)さんは、1955年、当時の西ドイツ・ハンブルクに生まれた児童文学作家であり、イラストレーターです。専門学校で学んだ後、雑誌や児童書のイラストレーターとして活動を開始し、ドイツで最も知られるイラストレーターの一人となりました。彼女の作品は、シンプルでユーモラスなイラストと深いテーマを組み合わせ、子どもだけでなく大人の心も捉えます。
2001年には、自身が文と絵を手がけた『おこりんぼママ』(原題:Schreimutter)でドイツ児童図書賞絵本部門を受賞し、2010年には国際アンデルセン賞画家賞を受賞しています。主な作品として、『色の女王』(原題:Die Königin der Farben)、『いつもだれかが…』(原題:Opas Engel)、『羊のセルマ』(原題:Selma)などがあり、これらの作品は日本語にも翻訳されています。

上田 真而子(訳)

上田真而子(うえだ まにこ、1930年 – 2017年)さんは、日本のドイツ文学者、翻訳家です。京都府立女子専門学校を卒業後、西ドイツに留学し、マールブルク大学を中退しました。帰国後は京都ドイツ文化センターに勤務し、その後ドイツ児童文学の翻訳に専念しました。1982年にはミヒャエル・エンデの『はてしない物語』の翻訳で日本翻訳文化賞を受賞し、1988年には『あの年の春は早くきた』で国際アンデルセン賞国内賞を受賞しました。その他の翻訳作品には、ユッタ・バウアーの『いつもだれかが…』やヨハンナ・シュピリの『ハイジ』などがあります。夫は哲学者の上田閑照さんです。

おすすめ対象年齢

ユッタ・バウアーの絵本『いつも だれかが…』は、対象年齢は主に5歳から小学校低学年の子どもたちが適しています。しかし、大人も楽しめる深いテーマが込められており、親子で読み聞かせながら感情を共有するのに最適です。シンプルな文章と絵が織りなす物語は、子どもにもわかりやすく、さらに成長とともに異なる視点で楽しめる作品です。

レビュー

『いつも だれかが…』は、シンプルな絵と短い文章でありながら、非常に深い感動を与えてくれる絵本です。祖父が語る人生の回顧と、天使の存在を通じて描かれる「見守られる安心感」や「人生の不思議なつながり」が心に響きます。子どもにとっては目に見えないものを信じる力、大人にとっては日常の中で忘れがちな感謝や支えを再認識させられる作品です。絵の温かみが物語の優しさをさらに引き立てており、親子で読むことで絆が深まる一冊だと感じました。

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