
『おたすけこびとのにちようび』は、なかがわちひろ作、コヨセ・ジュンジ絵による絵本で、2017年に徳間書店から発行されました。この作品は、「おたすけこびと」シリーズの第六弾で、日曜日の休日を楽しむこびとたちの姿が描かれています。お弁当を作り、野原で遊ぶこびとたちは、困っているカメを見つけ、やっぱり働く車と共に助けに向かいます。細部まで描かれたイラストと、こびとたちの生き生きとした様子が魅力の一冊です。
略歴
なかがわちひろ
なかがわちひろ(中川千尋)は、1958年に関東地方で生まれ、転勤族の家庭で育ちました。小学4年生の秋から中学3年生の秋まで仙台で過ごし、高校時代にはアメリカ・サンディエゴに1年間留学しました。東京藝術大学美術学部芸術学科を卒業後、劇団テアトル・エコーの座付き翻訳者としてコメディの翻訳に従事しましたが、子どもの本に強い関心を抱き、福武書店児童書編集部での翻訳活動を開始しました。以降、児童文学の作家、画家、翻訳家として多彩な作品を手がけています。翻訳作品には『ふしぎをのせたアリエル号』や『ちいさなあなたへ』などがあり、創作絵本には『のはらひめ』や「おたすけこびと」シリーズなどがあります。受賞歴も豊富で、『どうぶつがすき』で日本絵本賞翻訳絵本賞、『天使のかいかた』で日本絵本賞読者賞、『かりんちゃんと十五人のおひなさま』で野間児童文芸賞を受賞しています。彼女の作品は、子どもの豊かな感性を育むものとして高く評価されています。
コヨセ・ジュンジ(絵)
コヨセ・ジュンジさんは、1949年生まれ、福岡県出身のイラストレーター・絵本画家です。セツ・モードセミナーを卒業後、雑誌『アン・アン』『オリーブ』『BMWバイクス』などでイラストレーションを手がけ、単行本の装丁や表紙画も担当されました。
絵本作家としては、なかがわちひろさん文の「おたすけこびと」シリーズのイラストを担当し、これが初の絵本作品となりました。このシリーズは、ショベルカーやブルドーザーなどの働く車とこびとたちが活躍するユニークな内容で、国内外で高い評価を受けています。特に、アメリカのホーンブック誌の2008年のベストブックスに選ばれました。他の作品には、『こうじのくるま』『まちのくるま』(WAVE出版)などがあり、精密な描写で知られています。ねじの1本まで描くことを信条としており、その緻密なイラストレーションが多くの読者に支持されています。また、2024年には射水市大島絵本館で原画展が開催されるなど、精力的に活動を続けておられます。コヨセさんの作品は、子どもから大人まで幅広い層に愛されており、その独特の世界観と精密なイラストレーションが魅力となっています。
おすすめ対象年齢
出版社のおすすめ年齢は3歳からとなっていますが、細部まで描かれたイラストや、こびとたちの活躍するストーリーは、幼児から小学校低学年の子どもたちまで幅広く楽しめる内容です。特に、働く車や小さなキャラクターが好きな子どもたちにとって、興味を引く要素が多く含まれています。
レビュー
『おたすけこびとのにちようび』は、シリーズの中でもこびとたちのプライベートな一面が描かれており、彼らのキャラクター性がより深く感じられる作品です。休日を楽しむこびとたちの様子は微笑ましく、読者も一緒に野原で遊んでいるような気分になります。また、困っているカメを見過ごせず助けに向かう姿勢は、子どもたちに思いやりの大切さを伝える良い機会となるでしょう。コヨセ・ジュンジさんの緻密で温かみのあるイラストは、ページの隅々まで楽しめ、何度でも読み返したくなる魅力があります。働く車とこびとたちの組み合わせは、子どもたちの好奇心をくすぐり、親子で楽しい時間を過ごせる一冊です。