おたすけこびとのクリスマス/なかがわちひろ

『おたすけこびとのクリスマス』は、なかがわちひろ作、コヨセ・ジュンジ絵による絵本で、2009年に徳間書店から発行されました。この作品は、人気シリーズ「おたすけこびと」の第2作で、クリスマスの夜に小人たちが働く車を駆使してプレゼントを届ける物語です。細部まで描き込まれたイラストと、わくわくするストーリーが魅力で、クリスマスシーズンにぴったりの一冊です。

略歴

なかがわちひろ

なかがわちひろ(中川千尋)は、1958年に関東地方で生まれ、転勤族の家庭で育ちました。小学4年生の秋から中学3年生の秋まで仙台で過ごし、高校時代にはアメリカ・サンディエゴに1年間留学しました。東京藝術大学美術学部芸術学科を卒業後、劇団テアトル・エコーの座付き翻訳者としてコメディの翻訳に従事しましたが、子どもの本に強い関心を抱き、福武書店児童書編集部での翻訳活動を開始しました。以降、児童文学の作家、画家、翻訳家として多彩な作品を手がけています。翻訳作品には『ふしぎをのせたアリエル号』や『ちいさなあなたへ』などがあり、創作絵本には『のはらひめ』や「おたすけこびと」シリーズなどがあります。受賞歴も豊富で、『どうぶつがすき』で日本絵本賞翻訳絵本賞、『天使のかいかた』で日本絵本賞読者賞、『かりんちゃんと十五人のおひなさま』で野間児童文芸賞を受賞しています。彼女の作品は、子どもの豊かな感性を育むものとして高く評価されています。

コヨセ・ジュンジ(絵)

コヨセ・ジュンジさんは、1949年生まれ、福岡県出身のイラストレーター・絵本画家です。セツ・モードセミナーを卒業後、雑誌『アン・アン』『オリーブ』『BMWバイクス』などでイラストレーションを手がけ、単行本の装丁や表紙画も担当されました。
絵本作家としては、なかがわちひろさん文の「おたすけこびと」シリーズのイラストを担当し、これが初の絵本作品となりました。このシリーズは、ショベルカーやブルドーザーなどの働く車とこびとたちが活躍するユニークな内容で、国内外で高い評価を受けています。特に、アメリカのホーンブック誌の2008年のベストブックスに選ばれました。他の作品には、『こうじのくるま』『まちのくるま』(WAVE出版)などがあり、精密な描写で知られています。ねじの1本まで描くことを信条としており、その緻密なイラストレーションが多くの読者に支持されています。また、2024年には射水市大島絵本館で原画展が開催されるなど、精力的に活動を続けておられます。コヨセさんの作品は、子どもから大人まで幅広い層に愛されており、その独特の世界観と精密なイラストレーションが魅力となっています。

おすすめ対象年齢

出版社のおすすめは3歳からとなっていますが、文章が短く、絵の情報量が豊富なため、1歳からでも十分楽しめる内容です。特に、働く車や細かい描写が好きな子どもには、年齢を問わず興味を引くでしょう。また、絵をじっくり眺める楽しさがあるため、幼児から大人まで幅広い年齢層で楽しめる絵本です。

レビュー

『おたすけこびとのクリスマス』は、クリスマスシーズンにぴったりの夢と楽しさが詰まった絵本だと感じました。なかがわちひろさんのシンプルながら心温まるストーリーに加え、コヨセ・ジュンジさんのイラストは圧倒的な情報量と精巧さで、ページをめくるたびに新たな発見があります。小人たちが働く車を駆使してプレゼントを届ける場面は、子どもだけでなく大人もわくわくさせる魅力にあふれています。
また、クリスマスの魔法や期待感が丁寧に描かれており、家族で読み聞かせるのにも最適です。働く車や細かいメカニズムが描かれている点は、特に乗り物好きの子どもたちの興味を引くでしょう。そして、小人たちが協力して問題を解決する姿は、読者に仲間との助け合いや努力の大切さをさりげなく伝えてくれます。
この絵本は、季節感を存分に味わえると同時に、細部にまでこだわった世界観を楽しめる素晴らしい一冊です。クリスマスの夜、家族みんなで一緒に読みながら心温まる時間を過ごすのにぴったりだと思います。

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