
エリック・カール作、もりひさし訳の絵本『パパ、お月さまとって!』は、1986年にアメリカで出版された『Papa, Please Get the Moon for Me』の日本語版です。主人公の少女モニカが、窓の外に見えるお月さまと遊びたいと願い、父親に「お月さまをとって!」と頼む物語です。父親は長いはしごを使って月に登り、モニカのために月を持ち帰ります。この絵本は、ページが上下左右に広がる仕掛けが特徴で、子どもたちの想像力を刺激します。
略歴
エリック・カール
エリック・カール(Eric Carle、1929 – 2021年)は、アメリカを代表する絵本作家・イラストレーターです。彼はドイツで育ち、14歳の時にアメリカから家族とともに移住しました。戦時下の厳しい生活の中、彼の芸術の才能は養われ、デザインやアートへの興味が深まっていきました。その後、アメリカへ戻り、ニューヨークで学び、卒業後は広告業界でグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしました。そんな中、彼のイラストを見たビル・マーチンの依頼で『くまさんくまさんなにみてるの?』の挿絵を手がけたことがきっかけで、絵本作家としての道が開けます。1969年には、代表作となる『はらぺこあおむし』を出版。この作品は世界中で翻訳され、子どもたちに親しまれる名作となりました。カラフルでコラージュ技法を用いた独特な作風が特徴で、作品には自然や成長をテーマにしたものが多く、子どもたちの好奇心や想像力を刺激するものが多いです。
その後も多くの絵本を手がけ、教育的で遊び心のある作品を発表し続けました。彼の作品は、視覚的な美しさだけでなく、インタラクティブな要素を取り入れ、子どもたちが実際に体験しながら学べる構成が多いことでも知られています。
もり ひさし
もり ひさし(本名:森久保仙太郎)は、1917年に神奈川県津久井郡で生まれ、鎌倉師範学校を卒業後、小学校教師として勤務しました。教育者としての経験を活かし、児童文学作家や翻訳家としても活躍しました。特に、エリック・カールの『はらぺこあおむし』やガブリエル・バンサンの作品など、多くの絵本の翻訳を手掛けました。また、わかやまけんの「こぐまちゃんえほん」シリーズの制作にも関わり、こぐま社の設立にも参加しました。2018年に亡くなるまで、教育者、歌人、児童文学作家として多彩な活動を続けました。
おすすめ対象年齢
『パパ、お月さまとって!』は、3歳からの幼児を対象としています。しかし、仕掛け絵本としての楽しさや親子の絆を描いた内容から、幅広い年齢層の子どもたちに楽しんでもらえる作品です。
レビュー
この絵本は、子どもの純粋な願いと、それを叶えようとする父親の愛情が描かれています。エリック・カールの鮮やかなコラージュ技法と、ページを広げる仕掛けが組み合わさり、読者は物語の世界に引き込まれます。親子で読むことで、互いの絆を深めるきっかけとなるでしょう。また、月の満ち欠けを自然に学べる点も魅力的です。シンプルながら深いテーマを持つこの作品は、何度でも読み返したくなる一冊です。