エルサ・ベスコフ作・絵、小野寺百合子さん訳の『ペレのあたらしいふく』は、1945年にスウェーデンで初版発行され、日本では1976年に福音館書店から刊行されました。物語は、ペレという男の子が子羊の毛から新しい服を作る過程を描いています。羊の毛刈りから始まり、紡ぐ人、織る人、染める人、仕立てる人——たくさんの人の協力で服ができていく様子が丁寧に語られます。自然との共生や手仕事の尊さ、そして助け合いの精神が伝わる一冊。美しいスウェーデンの田園風景も魅力です。
略歴
エルサ・ベスコフ
エルサ・ベスコフ(Elsa Beskow, 1874–1953)は、スウェーデン生まれの絵本作家・画家です。ストックホルム出身で、美術学校で学んだ後、雑誌の挿絵を描きながら創作活動を始めました。1897年に発表した『ちいさな ちいさな おばあちゃん』で絵本作家としてデビュー。その後も『おひさまのたまご』『ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん』など、自然と子どもたちをテーマにした作品を多く生み出しました。彼女の作品は、温かなストーリーと繊細で優しい水彩画が魅力で、今も世界中で読み継がれています。
小野寺 百合子(訳)
小野寺百合子(おのでら ゆりこ、1906年–1998年)は、東京出身の翻訳家・随筆家・ノンフィクション作家です。東京女子高等師範学校附属高等女学校専攻科卒。在学中に小野寺信(陸軍中尉)と結婚し、夫の公使館付武官として赴任したラトビア・スウェーデンに同行。第二次世界大戦中は暗号電報の作成・解読に携わり、戦後はスウェーデン社会研究所の設立に尽力。トーベ・ヤンソン『ムーミン』シリーズやエルサ・ベスコフの絵本翻訳で知られ、1981年にはスウェーデン国王から北極星女性勲章一等を受章。著書に、自身の戦争体験を綴った『バルト海のほとりにて』などがあります。
おすすめ対象年齢
『ペレのあたらしいふく』は、3歳ごろから小学校低学年くらいまでが特に楽しめる内容です。物のしくみや過程に興味を持ち始める時期の子どもたちにぴったり。ストーリーは穏やかで、絵も優しいタッチなので、読み聞かせにも最適です。
レビュー
この絵本は、今の「すぐ手に入る」時代とは対照的に、物を作る手間や人の手の大切さを教えてくれます。ペレが新しい服を手に入れるまでの過程はまさに学びの宝庫。子どもに「どうやってできるの?」という興味を持たせる素晴らしいきっかけになります。特に印象的なのは、登場人物たちが親切で、それぞれの役割を丁寧に果たすところ。ベスコフのあたたかな絵と共に、優しい世界観に包まれながら、物を大切にする心も育まれる一冊だと思います。