ピン・ポン・バス/竹下 文子

『ピン・ポン・バス』は、文:竹下文子さん、絵:鈴木まもるさんによる、1996年刊行の偕成社の乗りもの絵本です。バスが駅前を出発し、「ピンポン」とベルが鳴るたびにスーパーマーケットや学校、お寺、大きな木の下など、さまざまな停留所に止まります。乗ってくる人、降りていく人、嬉しそうなお客さん、慌てて走ってきてギリギリで乗り込む人など、日常の情景がほのぼのと描かれていて、公共バスの温かみが伝わってきます。私たちの町にある「バスの風景」がそのまま絵本になったような心地よさがあって、小さな子どもから大人まで親しめる一冊です。

略歴

竹下 文子

竹下文子(たけしたふみこ)さんは1957年福岡県生まれ、東京学芸大学卒業。大学在学中から童話の執筆を始め、1978年に「月売りの話」で日本童話会賞を受賞。以降、『星とトランペット』『黒ねこサンゴロウ』シリーズなどで路傍の石幼少年文学賞を受賞し、長年にわたって児童文学・絵本の世界で活躍されています。代表作には『せんろはつづく』『ひらけ!なんきんまめ』『なまえのないねこ』など、受賞歴も多数(絵本にっぽん賞、産経児童出版文化賞、講談社絵本賞など)。静岡県在住で、多くの子どもたちに親しまれている作家です。

鈴木 まもる(絵)

鈴木まもるさんは1952年東京生まれ。東京芸術大学工芸科を中退後、1980年に『ぼくの大きな木』で絵本作家としてデビュー。作品数は200冊以上にのぼります。1995年に「黒ねこサンゴロウ」シリーズで赤い鳥さし絵賞を、2006年に『ぼくの鳥の巣絵日記』で講談社出版文化賞絵本賞、2015年には『ニワシドリのひみつ』で産経児童出版文化賞JR賞など数々の受賞歴あり。伊豆半島に在住し、画家・絵本作家として活動する傍ら、鳥の巣研究家として収集・展覧会・講演なども行っています。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は およそ2歳~ が目安です。リズム感のある短いセリフと優しいイラストで、幼児期の読み聞かせにぴったり。停留所ごとに生活の風景が描かれていて、“町のバス旅”を一緒に体験できるので、親子での共有体験に最適です。

レビュー

『ピン・ポン・バス』を読んでいると、まるで自分もバスに乗って小さな旅をしている気分になります。停留所ごとに乗ってくる人たちや降りていく人たちが描かれていて、ちょっとした日常の物語が広がっていくのが楽しいです。特別なことは起こらないのに、のどかな時間の流れに心がほっとします。鈴木まもるさんのあたたかい絵も魅力で、バスの車体や街並み、田舎の風景がやさしく描かれていて、子どもだけでなく大人も懐かしい気持ちになれます。読み終わると「またバスに乗って出かけたいな」と思わせてくれる、やさしい旅の絵本だと感じました。