わたしとあそんで/マリー・ホール・エッツ

マリー・ホール・エッツさんが文と絵、よだじゅんいちさんが訳を手がけた絵本『わたしとあそんで』。はらっぱにやってきた女の子が、生き物たちと遊びたいのに逃げられてしまい、静かにじっとしていると、今度は生き物の方から寄ってきてくれる、という心温まるお話です。初版原題は『Play with Me』、初版発行国はアメリカ、初版発行年は1955年です。日本語版は2023年にラボ教育センターから出版されました。白と黒、そして淡いピンクの優しい色合いで描かれた絵が、穏やかで包み込むような雰囲気を生み出しています。

略歴

マリー・ホール・エッツ

マリー・ホール・エッツ(1895年 – 1984年)さんは、アメリカの児童文学作家・絵本作家です。1950年代から60年代にかけて活躍し、数々の名作を世に送り出しました。特に、動物や子どもたちの素直な心情を描くのが得意で、その温かくユーモラスな作風は多くの人々に愛されています。代表作としては、コールデコット賞を受賞した『もりのなか』や、同じくコールデコット賞を受賞した『クリスマスまで9日』(1959年)などがあります。日本語に翻訳された作品も多く、日本でも長年にわたり愛され続けている作家さんです。

よだ じゅんいち(訳)

与田凖一(よだ じゅんいち、1905年–1997年)さんは、福岡県出身の児童文学者・詩人です。若くして教職に就いた後、上京して『赤い鳥』などに童話や詩を投稿し、児童文学の道に進みました。自由律詩のリズムを生かした作品が特徴で、自然や子どもの感性を大切にした創作を数多く発表しました。代表作には『わたしとあそんで』や『おひさまがいっぱい』などがあり、日本児童文学者協会の会長も務めました。生涯を通じて、子どもと自然をつなぐ文学を紡ぎ続けた作家です。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は、だいたい2歳から4歳くらいのお子さんにおすすめです。物語はシンプルで、女の子の気持ちの変化がとてもわかりやすく描かれています。また、絵のタッチがやわらかく、色使いも少ないので、小さなお子さんの心を落ち着かせてくれます。読み聞かせを通して、「待つこと」や「相手を尊重すること」を自然と学べる、心の教育にもぴったりの一冊だと思います

レビュー

この絵本は、読んでいると心がふっと軽くなるような、不思議な魅力がありますね。最初は、女の子が「遊んで!」と追いかけると生き物たちが逃げていく場面が、ちょっと切なく感じられます。でも、じっと座って待つことを覚えると、今度は生き物たちが自分から近づいてくる。このシーンは、自然との向き合い方だけでなく、人との関係にも通じる大切なメッセージが込められているように感じました。マリー・ホール・エッツさんのやわらかい絵と、よだじゅんいちさんの優しい訳が、物語の温かさを一層引き立てていて、とても素敵な一冊でした。