しろくまちゃんのほっとけーき/わかやま けん

『しろくまちゃんのほっとけーき』は、1972年にわかやま けん氏が作・絵を担当し、こぐま社から発行された絵本です。この作品は、しろくまちゃんがホットケーキを作る過程を描いており、卵を割り、牛乳を入れ、生地を混ぜ、焼き上げるまでの一連の流れが、リズミカルな擬音語とともに表現されています。特に、ホットケーキが焼ける場面では、「ぽたあん」「どろどろ」「ぴちぴちぴち」「ぷつぷつ」などの音が使われ、子どもたちの興味を引きつけます。完成したホットケーキを友達のこぐまちゃんと一緒に食べるシーンもあり、友達と共有する喜びが伝わってきます。鮮やかなオレンジ色を基調としたイラストは、子どもたちの心に強く残り、長年にわたり愛され続けています。

また、2009年には点字付きのバリアフリー絵本としても出版され、視覚に障害のある方も楽しめるよう工夫されています。この絵本は、子どもたちが初めて出会う絵本として最適であり、親子で一緒に読むことで、料理の楽しさや友達と共有する喜びを感じることができます。
さらに、しろくまちゃんのホットケーキ作りの様子を楽しめる動画も公開されています。

わかやま けんの略歴

わかやま けん(1930年生まれ)は、日本の絵本作家で、岐阜県岐阜市の出身です。 グラフィックデザイナーとしての経験を経て、児童書の世界に進出しました。1968年に初の創作絵本『きつねやまのよめいり』を発表し、第16回サンケイ児童出版文化賞を受賞しました。1970年から始まった「こぐまちゃんえほん」シリーズは、明快な線と鮮やかな色彩で幼児の日常生活を描き、特に『しろくまちゃんのほっとけーき』は293万部を超えるベストセラーとなっています。 2015年に逝去しましたが、その作品は現在も多くの子どもたちに親しまれています。

おすすめ対象年齢

『しろくまちゃんのほっとけーき』は、主に乳幼児から未就学児(0歳~5歳)を対象とした絵本です。物語は簡潔でわかりやすい言葉で描かれ、身近な生活体験であるホットケーキ作りをテーマにしているため、親子で楽しみながら読み進めることができます。また、絵本のカラフルで明確なイラストは視覚的に幼い子どもにも理解しやすく、繰り返し読むことで言葉や物語の楽しさを感じられる作品です。

レビュー

『しろくまちゃんのほっとけーき』は、シンプルでありながら心に残る魅力を持つ絵本です。わかやま けんさんの優しいタッチと鮮やかなオレンジ色が印象的で、子どもたちがすぐに引き込まれる工夫が満載です。ホットケーキを焼く工程が一つひとつ丁寧に描かれていることで、読者がその場にいるような気分に浸れるだけでなく、実際にホットケーキを作りたくなる気持ちにさせてくれます。

また、この絵本の大きな魅力は、擬音語を駆使した生き生きとした描写です。「ぽたあん」「ぷつぷつ」「ぺたん」といった音がまるで耳に聞こえてくるようで、子どもたちが自然と声に出して楽しめる要素がたくさんあります。こうした擬音語は子どもが言葉を覚える助けにもなり、リズミカルな言葉の響きが子どもたちの好奇心や想像力を掻き立てます。

物語の中では、しろくまちゃんがホットケーキを作り、こぐまちゃんと一緒に食べるシーンが描かれ、友達と分け合う喜びや、共同作業を楽しむ気持ちが自然に伝わってきます。特に、焼き上がったホットケーキをふたりで分け合う場面は、単に「食べる」行為以上の温かさが感じられ、読者もほっと心が温まります。こうした温かいストーリーが、親子の読書時間をより充実したものにしてくれます。

さらに、この絵本の構成は、子どもが理解しやすい簡潔で明確なストーリー展開になっており、シンプルなページ構成も子どもが集中しやすい工夫が施されています。絵と文字が大きく見やすく配されているため、小さな子どもでもページをめくるごとに次の展開にワクワクしながら進むことができます。また、親も一緒に楽しめる内容で、読み聞かせを通じて子どもとの会話が弾む場面が多いのも特徴的です。

この絵本は、料理に興味を持ち始めた幼児にぴったりであり、親子で実際にホットケーキを作る際にも一緒に楽しめるでしょう。わかやま けんの作品には、子どもたちの視点に寄り添った優しい視線が感じられ、『しろくまちゃんのほっとけーき』はその中でも特に、生活の中での小さな「楽しみ」や「発見」をテーマにした傑作です。

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