ビル・マーチン文、エリック・カール絵の『しろくまくんなにがきこえる?』(原題 Polar Bear, Polar Bear, What Do You Hear?)は、動物の鳴き声をテーマにしたリズミカルな絵本です。初版は1967年アメリカで出版され、日本語版は1992年に偕成社より刊行されました。しろくまくんが耳をすますと、さまざまな動物たちが登場し、「なにがきこえる?」と問いかける形で物語が進みます。エリック・カールの鮮やかなコラージュが迫力いっぱいに動物を描き、親子で声に出しながら楽しめる作品です。動物園を舞台にしたやりとりが、読み聞かせを通じて子どもの好奇心と観察力を育みます。
略歴
ビル・マーチン
ビル・マーチン・ジュニア(Bill Martin Jr.、本名:ウィリアム・アイヴァン・マーチン・ジュニア、1916 – 2004)は、アメリカ・カンザス州ハイアワサ出身の教育者であり、児童文学作家です。幼少期は読書に困難を抱えていましたが、カンザス州立師範大学(現エンポリア州立大学)で詩を暗唱することで読解力を向上させました。その後、ノースウェスタン大学で初等教育の博士号を取得し、教育者としての道を歩みました。第二次世界大戦中は陸軍航空隊で新聞編集者として従事し、1945年には兄のバーナードと共に最初の絵本『The Little Squeegy Bug』を出版しました。その後、エリック・カールとの共作『くまさん くまさん なにみてるの?』や、ジョン・アーチャンボルトとの共作『Chicka Chicka Boom Boom』など、300冊以上の児童書を手がけました。彼の作品はリズミカルな言葉遣いと繰り返しの構造で知られ、子どもたちの言語発達に大きな影響を与えました。
エリック・カール
エリック・カール(Eric Carle、1929 – 2021年)は、アメリカを代表する絵本作家・イラストレーターです。彼はドイツで育ち、14歳の時にアメリカから家族とともに移住しました。戦時下の厳しい生活の中、彼の芸術の才能は養われ、デザインやアートへの興味が深まっていきました。その後、アメリカへ戻り、ニューヨークで学び、卒業後は広告業界でグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしました。そんな中、彼のイラストを見たビル・マーチンの依頼で『くまさんくまさんなにみてるの?』の挿絵を手がけたことがきっかけで、絵本作家としての道が開けます。1969年には、代表作となる『はらぺこあおむし』を出版。この作品は世界中で翻訳され、子どもたちに親しまれる名作となりました。カラフルでコラージュ技法を用いた独特な作風が特徴で、作品には自然や成長をテーマにしたものが多く、子どもたちの好奇心や想像力を刺激するものが多いです。
その後も多くの絵本を手がけ、教育的で遊び心のある作品を発表し続けました。彼の作品は、視覚的な美しさだけでなく、インタラクティブな要素を取り入れ、子どもたちが実際に体験しながら学べる構成が多いことでも知られています。
おおつき みずえ(訳)
おおつきみずえ(大槻美津江)さんは、英米児童文学や絵本の翻訳者として活躍されています。『ぼくのねこみなかった?』をはじめ、『パンダくんパンダくん なにみているの?』『しろくまくんなにがきこえる?』なども翻訳を担当しました。彼女の翻訳は、シンプルでリズム感があり、子どもが声に出して楽しめる工夫がされています。また、原文の持つユーモアやリズムを日本語に自然に置き換えることに定評があり、多くの親子に親しまれています。幅広い作品を手がけ、海外絵本の魅力を日本に伝える役割を担ってきた存在です。
おすすめ対象年齢
対象年齢は2歳ごろから小学校低学年くらいまでおすすめです。シンプルな繰り返しの言葉とリズム感があるので、言葉を覚えはじめた子どもにぴったりです。動物の鳴き声をまねしたり、問いかけに答えたりしながら親子で参加できるのが魅力。ページをめくるたびに新しい動物が現れるので、小さな子も飽きずに最後まで楽しめます。読み聞かせの入門にも最適な一冊です。
レビュー
読んでみてまず感じたのは、声に出すととても楽しい絵本だということです。「しろくまくん、しろくまくん、なにがきこえる?」という問いかけに答える形で、次々に動物が登場していくので、子どもが自然と声を合わせて参加してくれます。特に鳴き声の場面は笑いが起きたり真似したりと大盛り上がり。エリック・カールのカラフルで大胆なコラージュは、ページを開くたびに目を引きます。単なる動物紹介にとどまらず、リズム感や対話を通じて言葉の楽しさを体験できるのが魅力的です。何度読んでも親子で楽しめる、まさに読み聞かせの定番だと思いました。


