『しずかに!ここはどうぶつのとしょかんです』(原題:Quiet! There’s a Canary in the Library)は、アメリカの作家ドン・フリーマンが1969年に発表した絵本です。日本語版は、なかがわちひろさんの翻訳で2008年にBL出版より刊行。図書館が大好きな女の子カリーナが「もしも、どうぶつたちが図書館に来たら…」と空想を広げていくお話。しずかに本を読むはずが、ネズミ達が走り回って、各々の動物たちが大混乱! 想像の中で図書館がにぎやかになる様子が、とっても楽しく描かれています。読み聞かせにもぴったりな、テンポよく展開する1冊です。
略歴
ドン・フリーマン
ドン・フリーマン(Don Freeman, 1908-1978)は、アメリカ出身の画家・絵本作家・イラストレーター。ニューヨークで画家として活動したのち、1950年代以降、児童書や絵本の執筆・挿絵を多数手がけました。代表作といえばまず『Corduroy』(日本語版『くまのコールテンくん』)が長年にわたって親しまれており、全米教育協会「教師が選ぶ子ども向け本TOP100」にも選ばれています。続編として1978年に『A Pocket for Corduroy』も書かれ、絵本だけでなく、背景にニューヨークの街や人々への観察眼からくる静かな感情描写がある点が高く評価されています。
なかがわちひろ(訳)
なかがわちひろ(中川千尋)さんは、1958年に関東地方で生まれ、転勤族の家庭で育ちました。小学4年生の秋から中学3年生の秋まで仙台で過ごし、高校時代にはアメリカ・サンディエゴに1年間留学しました。東京藝術大学美術学部芸術学科を卒業後、劇団テアトル・エコーの座付き翻訳者としてコメディの翻訳に従事しましたが、子どもの本に強い関心を抱き、福武書店児童書編集部での翻訳活動を開始しました。以降、児童文学の作家、画家、翻訳家として多彩な作品を手がけています。翻訳作品には『ふしぎをのせたアリエル号』や『ちいさなあなたへ』などがあり、創作絵本には『のはらひめ』や「おたすけこびと」シリーズなどがあります。受賞歴も豊富で、『どうぶつがすき』で日本絵本賞翻訳絵本賞、『天使のかいかた』で日本絵本賞読者賞、『かりんちゃんと十五人のおひなさま』で野間児童文芸賞を受賞しています。彼女の作品は、子どもの豊かな感性を育むものとして高く評価されています。
おすすめ対象年齢
この絵本は、4歳〜小学校低学年くらいの子にぴったり。図書館や本に興味が出てきた頃の子どもたちが、「もしも動物が本を読みに来たら?」というユニークな設定にワクワクできます。読書のルールやマナーについても自然と学べる構成なので、図書館デビュー前の読み聞かせにもおすすめです。
レビュー
「図書館ってしずかにする場所だよね」と思いきや、この絵本では動物たちがわんさか登場して、まさかの大騒ぎ!ちょろちょろネズミ、逃げるカナリア、机をひっくり返すライオンなどなど、想像の世界ならではのめちゃくちゃっぷりが面白くて、読みながら笑ってしまいました。でも、カリーナの「やっぱりしずかな図書館が好き」という締めがじんわり素敵。本好きの子にも、これから本に親しむ子にもぴったりな、楽しくてちょっとためになる一冊です。


