『かえりみち』は、あまんきみこさんが文を、西巻茅子さんが絵を手がけた絵本。物語は、女の子が「おうちへかえりたい」と泣いていると、こぎつねが現れ、一緒にお家を探してくれます。その後、こぎつねが一人で帰る途中に迷子になり、こぐまと出会い、助けてもらいます。同様に、こぐまが迷子になると・・・。助け合いの連鎖が描かれています。この温かい物語は、1979年に童心社から発行されました。
略歴
あまんきみこ
あまん きみこ(阿萬 紀美子)さんは、1931年に生まれました。幼少期は新京や大連で過ごし、敗戦後の1947年に日本へ引き揚げました。結婚後、日本女子大学児童学科の通信教育部で学び、與田準一氏の紹介で「びわの実学校」に参加。1968年、同誌に掲載された短編をまとめた『車のいろは空のいろ』でデビューし、日本児童文学者協会新人賞を受賞しました。代表作には『ちいちゃんのかげおくり』『おにたのぼうし』『きつねのおきゃくさま』などがあり、これらは多くの教科書にも採用されています。
にしまきかやこ
にしまきかやこ(西巻 茅子)さんは、1939年、東京都世田谷区に生まれました。東京芸術大学工芸科を卒業後、リトグラフやエッチングを学び、日本版画協会展で新人賞や奨励賞を受賞しています。その後、絵本作家として活動を始め、『わたしのワンピース』や『ちいさなきいろいかさ』など、多くの作品を手掛けました。彼女の作品は、リトグラフや刺繍など多彩な技法を用いた温かみのある絵柄が特徴です。
おすすめ対象年齢
『かえりみち』は、3歳から6歳頃のお子さまに適した絵本です。物語の展開や登場する動物たちのやり取りが、幼児の興味を引きつけ、理解しやすい内容となっています。また、迷子になった女の子が助けを求める場面や、動物たちとの交流を通じて、他者との関わりや思いやりの大切さを学ぶことができます。親子での読み聞かせにも最適な一冊です。
レビュー
『かえりみち』は、助けられた者が次に誰かを助けるという優しいリレーのような物語です。最初に迷子になって泣いていた女の子が、こぎつねに助けられ、その後そのこぎつねが迷子になってこぐまに助けられ…と、助け合いが連鎖していきます。最後には、女の子がこうさぎを助けてあげる展開に、心があたたかくなりました。自分が受けたやさしさを、次の誰かに渡していくことの尊さを、シンプルなストーリーの中で子どもにも伝えることができる一冊です。西巻茅子さんの柔らかな絵も物語にぴったりです。