『ロージーのおさんぽ』(原題:Rosie’s Walk)は、イギリスの絵本作家パット・ハッチンスによる1968年の作品で、イギリスで初版が出版されました。邦訳は渡辺茂男さんによってなされ、1975年に偕成社から日本語版が刊行されました。物語は、めんどりのロージーが何気なく農場内を散歩しているだけのシンプルなストーリー。しかし、その背後ではキツネが彼女を狙っており、次々と失敗するユーモラスな展開が絵だけで語られます。文章は少なく、絵で楽しむ構成が特徴です。大胆な配色と構図も魅力で、絵本表現の新しさを感じさせる名作です。
略歴
パット・ハッチンス
パット・ハッチンス(Pat Hutchins、1942–2017)は、イギリス・ヨークシャー出身の絵本作家兼イラストレーター。ダーリントン美術学校やリーズ美術専門大学で学び、卒業後はロンドンの広告代理店勤務を経て1968年に児童書界へ進出。デビュー作の『Rosie’s Walk(ロージーのおさんぽ)』が高評価を受け、代表作『風がふいたら』(1974)ではケイト・グリーナウェイ賞を受賞しました。その後『ティッチ』シリーズをはじめ、40冊以上の絵本を自作自画し、『Rosie and Jim』でテレビにも出演。英国児童文学界のアイコン的存在として活躍し、2017年にロンドンで永眠されました。
わたなべしげお(訳)
渡辺茂男(わたなべしげお,1928年 – 2006年)さんは、日本の児童文学者、翻訳家です。静岡県静岡市葵区生まれ。静岡県立静岡商業学校、久我山工業専門学校を経て、慶應義塾大学文学部図書館学科を卒業後、米国のウェスタン・リザーブ大学大学院を修了しました。ニューヨーク公共図書館児童部勤務を経て、1975年まで慶應義塾大学文学部図書館学科教授を務めました。石井桃子さんを中心とする「ISUMI会」に携わったことがきっかけで、児童文学に関わるようになりました。日本国際児童図書評議会(JBBY)創立に尽力し、『寺町三丁目十一番地』で1969年に厚生大臣賞、1970年にサンケイ児童出版文化賞を受賞しました。
おすすめ対象年齢
『ロージーのおさんぽ』は、主に3歳から6歳ごろの幼児におすすめの絵本です。シンプルで繰り返しの多い文章と、視覚的なストーリーテリングに優れており、言葉がわかり始めた子どもにもぴったりです。読み聞かせだけでなく、絵を見ながら想像力を育てる一冊としても最適です。
レビュー
この絵本の最大の魅力は、文章よりも「絵」がすべてを語っている点です。めんどりのロージーは何も知らずに散歩しているだけなのに、その背後ではドタバタと滑稽なアクシデントが起きており、子どもはもちろん大人も思わず笑ってしまいます。文字が少ないため、自由に想像をふくらませて楽しむことができ、読むたびに新たな発見があります。パット・ハッチンスの鮮やかで構成的な絵の魅力も光り、絵本としての完成度がとても高いと感じました。視覚的なユーモアが詰まった、時代を超えて愛される名作です。