竹下文子さん作、鈴木まもるさん絵の『はしれ!たくはいびん』(2005年 偕成社)は、宅配便の車に乗って出発するワクワクする物語です。おじいちゃんの畑でとれたりんごを町まで運ぶ旅のなかで、小さなトラックから大きなトラックへと荷物が受け渡され、物流の流れが自然に描かれています。子どもたちは「荷物ってどうやって届くの?」という疑問に答えをもらえると同時に、乗り物の魅力もたっぷり味わえます。細やかな描写と温かみのある絵で、身近な宅配便が冒険のように楽しく見えてくる一冊です。
略歴
竹下 文子
竹下文子(たけしたふみこ)さんは1957年福岡県生まれ、東京学芸大学卒業。大学在学中から童話の執筆を始め、1978年に「月売りの話」で日本童話会賞を受賞。以降、『星とトランペット』『黒ねこサンゴロウ』シリーズなどで路傍の石幼少年文学賞を受賞し、長年にわたって児童文学・絵本の世界で活躍されています。代表作には『せんろはつづく』『ひらけ!なんきんまめ』『なまえのないねこ』など、受賞歴も多数(絵本にっぽん賞、産経児童出版文化賞、講談社絵本賞など)。静岡県在住で、多くの子どもたちに親しまれている作家です。
鈴木 まもる(絵)
鈴木まもるさんは1952年東京生まれ。東京芸術大学工芸科を中退後、1980年に『ぼくの大きな木』で絵本作家としてデビュー。作品数は200冊以上にのぼります。1995年に「黒ねこサンゴロウ」シリーズで赤い鳥さし絵賞を、2006年に『ぼくの鳥の巣絵日記』で講談社出版文化賞絵本賞、2015年には『ニワシドリのひみつ』で産経児童出版文化賞JR賞など数々の受賞歴あり。伊豆半島に在住し、画家・絵本作家として活動する傍ら、鳥の巣研究家として収集・展覧会・講演なども行っています。
おすすめ対象年齢
『はしれ!たくはいびん』の対象年齢は、2歳から6歳くらいの幼児向けとされています。宅配便の仕組みや乗り物の活躍をシンプルでわかりやすいストーリーと絵で表現しているため、乗り物好きの子どもたちはもちろん、ちょっと大きくなった子が物流の流れを知る入門書として楽しめます。読み聞かせでも、自分読みでもおすすめです。
レビュー
この絵本を読んで、普段当たり前のように受け取っている宅配便が、こんなに多くの人や車のリレーで支えられているのだと改めて感じました。小さなトラックから大きなトラックへ荷物が渡されていくシーンは、見ていてワクワクしますし、子どもも大人も「なるほど!」と納得できる展開です。鈴木まもるさんの生き生きとした車の描写は、動きや音まで感じられるようで迫力があります。乗り物好きな子はもちろん、ものが届く仕組みに興味を持ち始めた子にもぴったりで、読みながら「次はどうなるの?」と会話が弾む一冊だと思いました。


